「太っちゃった」「お腹が出てきたな」。肥満は忌み嫌われているが、肥満に関しては誤解も多い。岡山大学医学部の中尾篤典教授は「例えば、年を取ると代謝が下がり中年太りになりやすい、というのは間違いです。20〜50代は代謝率が安定し、低下することなく横ばいで60代になると1年ごとに0.7%ほど低下することがわかっています」という――。

※本稿は、中尾篤典・毛内拡(著)、ナゾロジー(協力)『ウソみたいな人体の話を大学の先生に解説してもらいました。』(秀和システム)の一部を再編集したものです。

タイトなジーンズを着用しようとしている女性
写真=iStock.com/Doucefleur
※写真はイメージです

年をとっても代謝は落ちない‼

本稿は私たち現代人にとっての永遠のテーマともいえる老化とダイエットにまつわる内臓の話です。「内臓年齢」や「内臓脂肪」などの言葉が示すように内臓と老化・ダイエットの関係はもはや常識といってもよいでしょう。

しかし、その常識、どこまで最新の知識にアップデートできていますでしょうか?

「中年以降は太りやすくなる」という言葉を聞いたことがあると思います。ぽっこり出たお腹に象徴される中年太りの原因は、年を重ねることによる代謝の低下だと言われてきました。しかし、これまで代謝率が年齢ごとにどう増減するかというのは、実はほとんどわかっていませんでした。

アメリカ合衆国のデューク大学らが調査したところ、驚くことに、代謝率は20代〜50代の間は落ちないことが判明しました。

これまで私たちがしていた「中年になると代謝が下がるから太っても仕方ない」という言い訳はもう通じなくなります。

総エネルギー消費量は、基礎代謝量と食事誘発性体熱産生(食事後に静かにしていても勝手に上がる代謝量)、および身体活動によるエネルギー消費量に分けられます。我々が中年以降に落ちると思っていた「代謝」というのはこのうちの「基礎代謝量」で、つまり、何もしなくても身体が勝手に消費するエネルギー量と考えて差し支えありません。それは生きるために必要な最低カロリーのことを表します。

食事誘発性体熱産生は、食後に食べ物を消化・吸収・運搬する際に熱が発生し、それによりエネルギーが消費されることをいいますが、私たちが摂取するエネルギーの6~10%が食べ物を消化するために使われています。

また、身体活動による消費は、文字通り歩行や運動、仕事や姿勢を保持することで、筋肉を使う身体活動による消費が含まれます。

それでは、これらの代謝率は、年齢とともにどう変動するのでしょうか?