現代人は呼吸が浅く、速くなりすぎている

「息をつめる」という言葉があります。人は、細かい作業をするときに息を止める傾向があります。繊細な作業をするときには、呼吸による些細ささいな体の動きさえ邪魔になるからです。

今を生きる人たちは、つねに「息をつめる」状態であると言っても過言ではありません。ストレスや不安によって、呼吸を忘れたかのように毎日を過ごしているようなものです。

とくに現代人が呼吸が浅く速くなっているのは、交感神経が過剰にはたらいているからです。自律神経のシーソーが交感神経に大きく傾いていると、呼吸は浅くなり、そして速くなります。

もしも1分間で20回を超える呼吸をしているのなら、交感神経が上がりすぎているシグナル。車で言えば、ブレーキが壊れているのに気づかずに、つねにアクセル全開で走っているようなものです。

また、猫背が増えたことも、速くて浅い呼吸が習慣化した要因の一つです。朝起きてから寝る直前までスマホをのぞき込んでいる。職場では長時間のデスクワークをして、家に帰ったらソファに体を預けっぱなし。そんな悪い姿勢を続けていると、確実に頭が前に傾き、背中が丸くなります。

息を詰めてパソコン作業をしている男性
写真=iStock.com/Vahit Ozalp
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呼吸をするときの空気が流れる気管(気道)は、ストローと同じです。頭が前に傾き、首をくの字に曲げている時間が長いと、気管が圧迫されて呼吸が浅くなります。曲がるストローのようにジャバラがついていれば違いますが、気管には、そのような機能はありません。

くわえて、背中が丸まっていると「胸郭きょうかく」の動かせる範囲が狭くなります。胸郭は、心臓や肺を守るために肋骨や胸椎によってできている「じょうぶなカゴ」のようなもの。呼吸に合わせて胸郭は柔軟に膨らんだりしぼんだりします。猫背の姿勢を続けていると、胸郭が圧迫されて、しっかり膨らんだりしぼんだりできません。

ちなみに、迷走神経は、脳の「延髄」からスタートして、首を通って、内臓に枝分かれしています。首が前に傾き、背中が丸まっていたら、迷走神経という「情報の道」もスムーズに通れなくなってしまうのは歴然です。

さらに、頭が前に傾いている猫背のままでは、首の太い血管が圧迫されて脳だけでなく全身の血流が悪くなってしまいます。胃腸がつねに押さえつけられ、はたらきも弱まります。その結果、自律神経のバランスがさらに乱れ、免疫力も低下し、さまざまな病気を招いてしまうのです。