※本稿は、斎藤庸裕『大谷翔平語録』(宝島社)の一部を再編集したものです。
WBCは「世界一の選手になる」通過点
世界一の選手になる――。大谷はゴールのない道を歩んでいるように感じることがよくある。
2023年3月のWBCで侍ジャパンを3大会ぶりの世界一に導いた。最終回のマウンドに上がり、胴上げ投手となった。初出場のWBCで二刀流として大活躍し、大会MVPを獲得。世界一の選手の称号は得たようにも思えた。だが、大谷の感覚は違った。
「間違いなく今までのなかでベストの瞬間じゃないかなと思いますし、今日勝ったからといってその目標(世界一の選手になること)は達成されたわけではないので。一つの通過点として、もっと頑張っていきたいですし、これからシーズンが始まるので、そこに向けて日々努力したいと思っています」
次なる目標を聞かれ、即答した。
「シーズンが始まるので、そこでポストシーズン、ワールドシリーズで勝っていくのが次のステップ」
メジャー1年目から繰り返し口にしている言葉のため、さほど驚きはなかった。明確な目標はある。ただ、それがイコール世界一の選手かどうかは、わからない。むしろ、最終目的地は明確にはないのかもしれない。
評価するのは第三者
「世界一の選手」とは何をもって世界一なのかを、かつて聞いたことがある。すると、大谷はこう答えた。
「評価するのは第三者なので。いくら自分がやったと思っても、評価するのはファンの人とかじゃないかなと。評価基準がないので面白いのかなと思う部分もありますけど、最終的にそう評価してもらって、自己満足して終われたらいいんじゃないかと思う」
先述したように、毎年リーグMVPは、全米野球記者協会(BBWAA)の投票によって決まる。ファンではないが第三者が評価する。では、MVP=世界一の選手かと言えば、大谷にとってはそうでもないようだ。2021年に満票でリーグMVPを獲得した時、「目標とする世界一の選手になれたのか」と、インタビュアーから質問が飛んだ。