今年のNHK「紅白歌合戦」にジャニーズ事務所のタレントは出場するのか。コラムニストの木村隆志さんは「その可能性はかなり低いだろう。むしろNHKは『脱ジャニーズ』を印象づけ、番組への注目度を高められる。例年以上に見応えのある内容になりそうだ」という――。
NHKホール(写真=Kakidai/CC BY-SA 4.0/Wikimedia Commons)
NHKホール(写真=Kakidai/CC BY-SA 4.0/Wikimedia Commons)

本当に今年の紅白は「ジャニーズなし」になるのか

9月27日行われたNHKの定例会見は、業界関係者のみならず、多くの人々を驚かせた。

稲葉延雄会長がジャニーズ事務所のタレントへの新規出演依頼は、「被害者補償と再発防止の取り組みが着実に行われると確認されるまでは行わない」ことを明言。その後、山名啓雄メディア総局長が大晦日の『NHK紅白歌合戦』にも該当し、このままでは起用ゼロになることを明かした。

だからこそ10月2日に行われたジャニーズ事務所による2度目の会見は、その行方を左右するものとして注目されたが、「被害者補償の具体的なスケジュールや終了のメドは示されず」「新会社のガバナンスも不明瞭なものに留まる」「“NGリスト”が流出してしまう」という散々な結果で終了。6日に発表された『NHK紅白歌合戦』の司会4人の顔ぶれにもジャニーズ事務所のタレントはいなかった。

ネット上には、ジャニーズタレントたちの『NHK紅白歌合戦』出場を絶望視する声と、「まだ間に合うのではないか」と希望を抱く声に二分されているが、実際はどうなりそうなのか。

この2週間程度、各局のテレビマンや、長年『NHK紅白歌合戦』を取材してきた編集者、記者、芸能リポーターなどから聞いた声をベースに今年の放送を占っていく。

「他の事務所に移籍してもらいたい」

現在ジャニーズ事務所の所属タレントたちは、新会社とのエージェント契約締結に向けての話し合いを進めているという。

しかし、「それぞれグループか個人でエージェント契約を結べば、各局やスポンサー企業との新規契約が再開できるか」と言えば、答えは「NO」。被害者への補償に一定以上のメドが立って「ほぼ終わった」という状態になり、新会社のクリアな体制が認められなければ新規契約の再開は難しい。各局・各社が様子をうかがい合ってなかなか「GO」を出せないチキンレースのようになる可能性すらあるという。

そのため業界内には、「個人はもちろんのこと、できればグループごと他の事務所に移籍してもらいたい」という声すらあがっている。「ジャニーズと手を切れば新規オファーができるのに」と言いたいのだろう。

所属タレントの出演番組でスポンサー企業がCMを取り下げ、「穴埋めにACジャパンのCMが放送される」という事態が起きはじめているのだから無理もない。局に寄せられるクレームなども含めて、これまでの「一定の視聴率確保」という程度の理由では、起用したくてもできないのだ。

特に公共放送である上に報道局の力が強いNHKは、ジャニーズ事務所の動きを慎重に見極めなければいけないだけに、「11月中旬の出場者発表には間に合わない」と見る向きが多数派を占めている。