エンタメ部門を分離した米大手テレビ局

アメリカの民放テレビ局には歴史的に高い評価を受けている報道番組がある。3大テレビネットワーク(3大ネット)の一つであるCBSの看板報道番組「60ミニッツ」が代表例。権力に屈しない調査報道で有名だ。

「60ミニッツ」のチームは経験豊富なジャーナリストで構成されている。エンタメとは一切縁がない。アイドルやコメディアンがキャスターを務める案が持ち込まれたら、「そんなことしたら評判がガタ落ちになる」として一蹴するのは間違いない。

番組収録中のスタジオ
写真=iStock.com/Grafissimo
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ここで注目すべきなのは、3大ネット(CBS、ABC、NBC)のガバナンス体制だ。表面的には日本と同じ民放テレビ局なのだが、実態は異なる。

アメリカでは3大ネットは基本的に自社でエンタメ部門を持っていない。歴史的にドラマやバラエティなどの番組制作をハリウッドへアウトソース(業務委託)してきたという経緯があるからだ。

社員は「報道機関に勤めている」という意識を持つ

今からおよそ半世紀前に米連邦通信委員会(FCC)が3大ネットの独占的影響力を懸念し、「フィンシン・ルール」といった規制を導入したことが背景にある。

この結果、3大ネットは番組制作を禁じられ、外部の制作会社から必要なコンテンツを調達する仕組みが出来上がった。番組の著作権は3大ネットではなく、外部の制作会社に帰属することになったのだ(フィンシン・ルールは1993年に廃止)。

例えば、CBSから米バイアコム(現パラマウント・グローバル、大手映画スタジオ)が分離。テレビ局が自社で手掛けるコンテンツは、ざっくりと言えば報道とスポーツだけになった。

そんなことから、アメリカの3大ネット社員は「報道機関に勤めている」という意識を持っている。「ドラマをやりたい」と思って3大ネットに入社する人はいない。自然とファイアウォールが築かれたわけだ。