報道局からバラエティ部門へ異動させられて退社

個人的にも日本のテレビ業界とはそれなりにつながりがあり、報道とエンタメの一体化についての懸念や不満を耳にしたことが何度かある。

民放テレビ局報道局で新人教育を担当するベテラン記者は、「エンタメ希望なのに報道局に配属されて戸惑う新入社員がいる。困ったものだ」と嘆いていた。別の民放テレビ局では報道局の若手記者がバラエティ部門へ異動させられ、それを不本意に思って退社している。

ガバナンス改革とはいっても、エンタメ部門の分離は簡単にはできないだろう。それでもやれることはある。とりあえず報道とエンタメ両部門の人事異動を禁止し、採用も別枠にするのだ。

NHKはエンタメから全面撤退したほうがいい

ちなみにNHKでは歴史的に報道とエンタメは分離されてきた。とはいってもエンタメ部門のウエートが非常に大きいという点では民放と同じである。

そんなことからジャニーズ事務所との癒着が指摘されるのだろう。NHKは広告主を気にしないで済むのだから、本来ならば民放テレビ局とは違う対応をできたはずなのに。

NHKは視聴者から徴収する受信料で成り立つ公共放送だ。ならば「紅白歌合戦」をはじめエンタメから撤退してもいい。エンタメは民放テレビ局でも十分に担えるのであって、公共放送が手掛ける必要はない。常に民業圧迫の懸念もある。

NHK放送センター(本部)
写真=iStock.com/mizoula
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当たり前なのだが、民放テレビ局がやりたくてもやれないことをやるのが公共放送の使命だ。「やりたくてもやれないこと」の筆頭格が調査報道。コストが掛かるうえ、広告主も含め権力と対峙たいじする「番犬ジャーナリズム」が求められるからだ。

NHKがエンタメから撤退し、浮いた資金を「番犬ジャーナリズム」に集中投下する未来を想像してほしい。NHKには豊富な資金力と強力な取材力があるのだから、日本のジャーナリズムに計り知れない利益をもたらすのではないか。

ジャニーズ性加害のような問題が再び起きても、権力に忖度そんたくせず――言い換えれば弱者に寄り添って――に真っ先に総力取材を始めるはずだ。

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