TBS「報道特集」の検証で欠けていた視点
TBSが10月7日、ジャニーズ事務所とTBSの関係について検証し、「報道特集」で取り上げた。OBも含めて80人以上に取材し、日下部正樹キャスターが「ジャニーズという巨大な帝国を育てたのは、間違いなくテレビ局です」などと言及したことが大きな反響を呼んだ。民放テレビ局としてはしっかりやったと評価してもいい。
ただし大切な視点が一つ欠けていた。報道とエンターテインメント(エンタメ)の分離である。
「報道特集」でTBSは故ジャニーズ喜多川氏の性加害問題をスルーしてきたことについて何度も自戒していた。
番組の締めくくりに村瀬健介キャスターは真剣な面持ちで「取材力の足らなさ」と「人権感覚の鈍さ」を認め、「TBSと利害関係がある有力な人物や組織の不正に直面することが必ずある。そのときにしっかりと役割を果たせるよう取材力を磨いていく」と宣言した。
報道マンとしては立派な覚悟といえる。
しかし精神論を語っているだけではどうにもならない。仕組み自体を変えない限り根本的な問題解決につながらない。不正を起こした企業が「今後は問題が起きないよう努力します」と宣言するだけでは世間の納得を得られないように。
日本のテレビ局は「報道もやっているエンタメ企業」
どうすれば納得を得られるのか。「チェック・アンド・バランス」を基軸とするガバナンス(統治)体制の見直しである。ガバナンス改革があってこそ永続性が担保される。
日本のテレビ局は報道とエンタメの両輪で成り立っている。報道番組キャスターにジャニーズタレントが採用されている状況を考えれば、「報道もやっているエンタメ企業」と表現したほうが正確だ。収益的にも圧倒的にエンタメが優位なのだろう。
それでも報道機関を名乗りたいのならば、ファイアウォール(業務の壁)を設けて報道部門の独立性を担保しなければならない。そのために最も有効なのはガバナンス改革だ。