運のいい人は、人を助けたときにこそ感謝する
運のいい人は他者を蹴落としてひとり勝ちしようとする人でなく、他者と共に生きていこうとする人です。運を味方につけるには、日々の生活の中で、他者を思いやり、理解し、助け、利他行動をとるのが大事なのです。
ところで、自分以外のだれかを助けるときに心がけたいのが、「ありがとう」という気持ちを抱くことです。
「ありがとうと言うのは助けられる側では?」と思うかもしれませんが、感謝の気持ちを抱くべきなのは助ける側なのです。
人間の脳には、前頭前野内側部と呼ばれる部分があり、ここは自分の行動の評価を行っています。
人をだまして自分だけが得をするようなこと、たとえば仲間を蹴落として自分だけが出世したり、あるいは電車の中で目の前にお年寄りが立っているのに気づかないふりをしてしまったりしたら、「悪いことをしたな」と心が痛むのではないでしょうか。
逆に、仲間を思って行動したときや、お年寄りに席を譲ったときなどは「よいことをしたな」とよい気分になります。
実は助けた側が社会的報酬を得ている
このように、自分の行動のよしあしを判断するのが前頭前野内側部です。そしてこの部分が「よい行動だった」と判断すると、脳内の報酬系が刺激されて「ああ、よいことをして気分がいい」「私ってえらいな、すごいな」と思えるのです。だれかを助けたときには、当然「よい行動」と判断され、気分がよくなるでしょう。
また、助けた相手から「ありがとう」「あなたのおかげで助かった」などと感謝されること(社会的報酬を得ること)も少なくありません。
他人のために何かをするには、時間や労力、ときにはお金が必要で、一見、自己犠牲を払っているように思える場合もあります。しかし実際は、他者を助けることで気分がよくなり、ときには社会的報酬さえも得ているのです。
だれかを助けたり、だれかのためを思って行動したりするときに、もうひとつ覚えておきたいのが「互酬性の原理」です。
これは、もともと人間にはお互いに報酬を与え合う、お互いに報いるという性質が備わっているので、人はだれかから報酬を与えられると「お返しをしたくなる」というもの。
たとえばスーパーの食品売り場では、ときどき試食が行われていますね。店員さんから試食品を受け取って食べてしまうと、たとえそれがあまりおいしくなかったとしても、商品を買わずにその場を立ち去るのは何となく申し訳ない気がしてきます。家族総出で試食したときなどは、どうしても欲しいわけではないのについ買ってしまったりする。