個人が後継者のいない中小企業を買収するケースが増えている。どんな企業が狙い目なのか。スモールM&Aブームを牽引した事業投資家・三戸政和さんは「その判断は千差万別。それでも、『買いやすい会社』という見立てなら確かに存在する。そのポイントは4つある」という――。(第2回/全2回)

※本稿は、三戸政和『いますぐサラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』(講談社+α新書)の一部を再編集したものです。

1円でも会社は買える

2018年に『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』を刊行し、シリーズ累計20万部を突破、日本に一定の「スモールM&A」に関するムーブメントを起こすことができたと自負しています。

あれから5年、いまではすっかり「個人が会社を買う」ということがマーケットに定着しつつあります。

そして、この間、同時に「300万円で本当に会社は買えるのか?」と何度も聞かれました。

誤解を恐れずにいえば、書籍タイトルの「300万円」という金額は、あくまでキャッチコピーであって、「300万円の自己資金を用意し、300万円程度で売りに出ている会社を買いなさい」という意味ではありません。

こう書くと、「やっぱり三戸は適当なことを言っていたのか。300万円で買える会社なんてロクなものがないんだろう……」と思われるかもしれません。

でも、そうではありません。300万円あれば買える会社はたくさんあります。それどころか100万円でも、10万円でも、なんなら「1円」でも買える会社は存在します。

オフィスで一緒に書類作成に取り組んでいるビジネスマン
写真=iStock.com/PeopleImages
※写真はイメージです

貸し会議室の運営会社を買ってみた

たとえば、私の「サラ3サロン(サラリーマンが300万円で小さな会社を買うサロン)」に通っているメンバーに会計士Pさんがいます。

Pさんは、大手の監査法人を10年ほど前に辞めて独立しました。そして、200万円で貸し会議室を運営する会社を買いました。

本業があるので時間をあまり取られず、横展開が可能な業種ということで、コインランドリーや民泊の会社を探すなかで貸し会議室の会社に目をつけたわけです。

机や椅子といった備品と予約サイトのIDなど運営の仕組み一式、それらにひもづく既存顧客を譲り受けています。その時点で、この会社の収支状況は売り上げが月17万円ほど、利益が月4万円くらいだったといいます。