「会社の値段」を決めるには

M&Aの市場では、明確なルールではありませんが、会社の値段を決めるときは、次のような計算式を1つの目安としています。

株式価値(買収価格)=純資産+営業利益3〜5年分

純資産というのは、会社が保有している資産から負債を引いたものですが、長年経営されている中小企業では、資産は減価償却が終わっていてほとんどなく、借り入れが結構大きいので純資産が薄い。営業利益もほとんどないという会社はたくさん存在します。

この計算式をもとに考えれば、そうした会社を買う場合は「1円」でも交渉できます。これが先に、「1円でも買える会社はある」といった理由です。

ミニチュアのビジネスマン2人と日本円硬貨
写真=iStock.com/kellymarken
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営業利益ゼロの会社を買う意味

「純資産も営業利益もない会社を買って、はたして意味があるのか?」という意見があるかもしれません。

しかし、役員報酬がきちんと支払われていて、営業利益がゼロという場合ならどうでしょうか。オーナー社長になれば、会社からそれなりの役員報酬を得ることができ、「労働収入」(オーナーとしての報酬ではなく、自分が働いて得るお金)にはなりますが、「一定の意味」はある、と考えられませんでしょうか。

さらに、買収後に経営のテコ入れをすれば、営業利益が上がる可能性はあります。そこをしっかり見極めれば、“買い”の会社は1円でもちゃんと存在するのです。

それだけではなく、近年すっかり充実した事業承継等に関する融資制度を使えば、借入金で億単位の会社を買うことも可能です(詳細は『いますぐサラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』参照)。自己資金1円でも、その手元資金だけで会社を買うことができる、ということです。

ちなみに、「手元資金300万円だけで買える会社を」と考えた場合、一般の方は、家族+アルバイトで経営しているごく小さな規模の会社をイメージされるかもしれません。しかし、上記のように借り入れも組み合わせることで、従業員数十人〜100人規模、売上高数億〜数十億円規模の中小企業を買うことは十分できます。

「買いやすいビジネスモデル」は存在する

こういう話をすると必ずと言っていいほど聞かれるのが、「では、どういう会社を買えばいいか?」という質問です。

どういう会社を買えばいいかについての詳細は『いますぐサラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』にあたっていただくとして、その中で、確かに「買いやすいビジネスモデル」というものは存在します。

本稿では、その4つの基本ポイントを紹介しましょう。