「地域社会の継承と活性化」を狙うプログラム
休日の学童は滞在時間が長いため、午前と午後でグループを分け、幾つものメニューを提案する。前述のゲームや芸術活動、スポーツの選択肢が増え、自転車レッスンや演劇、詩や物語の作成など、より時間のかかる活動も入ってくる。運営主体が自治体のため、公営図書館やミュージアム、プールや運動場を活用することも盛んだ。筆者の子どもは、地元の花屋が協力してのフラワーアレンジメント教室に参加したこともあった。
このような活動には、地域社会の継承と活性化の意義が認められている。「レジャーや遊びを通して、地元の歴史や施設を子どもたちが知り、地域社会に繋がる」との認識のもと、意識的に組み込まれているのだ。
活動メニューは、自治体が国と結ぶ協定書「地域教育計画」の一環で、現場スタッフが携わって検討・考案される。団体行動を通して「他者を尊重し、共に生きる」市民生活の基礎を学ぶことが、教育計画の柱だ。
活動中の安全対策は自治体の責任で、プールの場合は専門の指導員資格を持つスタッフが同行し、参加には親の承諾を必須とする。
このように運営側がメニューを取り揃えても、その中の何を選ぶかは子ども次第。「今日は休みたい」という子の選択は尊重され、その場合は、事務仕事をする指導員の横で何もしないで過ごすこともできる。
運営費の約7割は公的資金
前述した活動内容は自治体によって変わり、保護者負担も全国一律ではない。
平日の学童保育は利用料の保護者負担なし・事前登録なしで、生徒の誰もが利用可能とする自治体もある。休日は、事前登録と保護者の所得額によって変わる利用料を課すのが一般的だ。
2016年の調査では、子1人当たり・1時間の運営費は、中央値がおよそ3.5ユーロ(約540円※当時、以下同)。この運営費は市町村の規模と利用児童の人数によって変動し、上は6.9ユーロ(約1070円)、下は1.9ユーロ(約295円)と大きく違いが出ている(出典:フランス地方公共団体財政監査局)
自治体は保護者利用料に加えて、家族政策の全国組織「全国家族手当金庫」や国からの助成を受けながら、自治体の年度予算で運営費を支出している。財源の割合は自治体負担が約5割、家族手当金庫が約2割、保護者負担が2割強と、公的資金で約7割をカバーする。支出の8割は人件費に割かれるという。2021年、全国家族手当金庫が学童保育関連に支出した金額は14億ユーロ(約2200億円)だった。