「給食と昼休み」も学童保育として扱っている
学童保育とは、放課後や休日、家庭以外の場所で、小学生に居場所や活動、見守りを提供するものだ。日本では民間主導で制度化された経緯から、多様な運営主体による様々な形態がある。その制度や課題については、「親の経済力で『放課後の過ごし方』がまるで違う…子どもの“格差”を拡大する日本の学童保育が抱える問題」で詳しく解説している。
学童保育は他の先進諸国にも存在し、その仕組みや運営方法は各国で異なる。筆者の住むフランスも、日本と違うやり方で学童保育を行う国の一つだ。たとえばフランスでは、放課後だけではなく「給食と昼休み」をも学童保育の一環として扱い、担当の職員を配置している。
「小学生の放課後・休日」に表れる社会の考え方や制度の違いを見ていこう。
ほぼ全国の児童が利用できる公共サービス
フランスの学童保育は、市町村にあたる基礎自治体の公共事業だ。義務教育の始まりの機関である保育学校(幼稚園)の3~5歳児と、小学校に通う6~11歳を主な対象とし、「家」と「学校」以外の子どもたちの生活時間を支援する。設置は自治体の義務ではないが、だからこそ学童保育の姿に、自治体ごとの児童政策への力の入れようが表れる。
2021年の統計によると、フランス国内の学童保育は約3万1000カ所、受け入れ枠は275万人分。対象年齢児童の9割は、学童保育のある自治体で就学している〔出典:全国家族手当金庫(CNAF)〕。山間部や農村部など一部を除き、ほぼ全国の児童がアクセスできる公共サービスだ。
学童保育は公教育上も重視されており、設備や人員の最低基準を国が定めている。また学童保育で働くスタッフの資格は専門資格が9種類、その他保育士など、学童保育で勤務可能な別資格があり、どれも国が養成課程と職能を規定するものだ。
筆者は2人の子どもが学童保育の対象年齢の頃、パリ郊外で3つの自治体に住んだ。そのすべてで学童保育が完備され、希望を出せば待機なく利用できた。環境が良く活動メニューが充実していたことが幸いし(内容は後述する)、子どもたちはそれぞれ合計8年間、不満なく通い続けることができた。子どもたちの生活と筆者の子育てを支えてくれた存在で、「学童保育がなければ、共働きを続けられなかった」と感じている。