スタッフの給料は安く、高資格者が集まりにくい
国として制度を整え財政支出し、自治体主導で公共サービスとして提供されている、フランスの学童保育。親としてはありがたい制度でとても助けられている実感があるが、現場では常に、問題と改善が訴えられている。そのうち大きな点の一つが、スタッフの質と数の確保だ。
フランスの学童保育は「社会文化活動 Animation socioculturelle」の一環として、「アニマトゥール Animateur」と呼ばれる職員たちに担われている。アニマトゥールの活動領域は学童保育に限らず、他の福祉施設、スポーツクラブやサマーキャンプ、レジャー施設、期間限定のイベントなど幅広い。
多くの人材が求められることもあり、従事するための初等資格は16歳から取得可能で、取得条件の研修は「最短30日間ほどの研修」と比較的短期間で設定されている。学業を中退した若者や転職者に職業訓練の道を開く効能があるが、反面、職業人としてのモラルや信念、経験が十分でないまま、子どもたちの生活の場で働くスタッフも出てしまう。
また自治体、もしくは自治体が委託する非営利団体の雇用ではあるが、給与は最低賃金での契約が多く、他の職業と比較して高資格者が集まりにくい現実がある。
小児性加害のリスクも排除しきれない
そして児童を対象とする職であるがゆえに、小児性加害のリスクを排除しきれないジレンマがある。求人応募に際しては無犯罪証明の提出が必須で、採用側が志望者の職歴や過去の問題行動の有無を確認できる全国ネットワークシステムがあるものの、初犯を予防する有効な仕組みは構築できていない。
2022年春には、アニマトゥール経験者が現場での性加害・ハラスメントを告発する#MetooAnimationの運動が起こり、短期間で400件を超える声が寄せられたことから、この問題が改めて一般社会に可視化された。国民教育省もこの運動に応答し、同年10月に性加害予防研修の強化や、性加害対策の再周知などの対策を発表している。しかし現場レベルでの対応と実効性は、地域や責任者による格差が懸念されている。