授業のない時間の教育効果を国が考える
フランスの学童保育に公的資金が多く支出される背景には、子どもたちの生活時間全体に対する、国としての考え方がある。
フランスの国家法典の一つ「社会福祉・家族法典」では、「すべての未成年が親・法定後見人の住居以外に受け入れられる際は、公的機関の保護下に置かれる」と定められている。(L227条)
学童保育が公共サービスになっている根拠の法律だ。加えて教育法典でも、「学校周辺時間は公教育サービスの延長線上において、自治体の地域教育計画で運営されうる」「地域教育計画は児童の自由時間において、文化・スポーツ・テクロノジーに触れる機会の平等を促進する」と記されている。(L551-1条)
子どもたちの「水曜日の過ごし方」を議論
近年では、教育法改正による授業時間の再編と短縮に伴って、子どもたちの「授業のない時間」をどう扱うかが再検討された。
フランスでは保育学校・小学校の時間割が市町村の決定に委ねられており、週24時間の授業を、水・土・日を除く平日4日間か、平日4日間+水曜日午前中の4.5日間かで配分する。2018年の実態調査では、公立学校のある自治体の87%が平日4日間の時間割を採用していることが明らかになった(出典:フランス公共サービス情報サイト)。つまり水曜日に「学校に通わない児童」が多数派になったということだ。
これを受けて国民教育省は2018年、子どもたちの「水曜日の過ごし方」の重要性を、各自治体に改めて訴えた。具体的には「水曜日計画 Plan mercredi」を掲げ、水曜日の学童保育で教育面の質を向上する協定を自治体に提案。国の基準でそれを採用する市町村には、追加の運営助成金を給付する政策を施行している。
この「水曜日計画」施行後に新型コロナ禍が起こり、普及に足止めがかかったため、政府は2021年に改めて、政策をより強化する方針を打ち出した。学童保育の充実が国策として推進され続けていることを示す一例だろう。