Z世代は「本物の友情」に飢えている

3つ目は新型コロナによる行動制限の影響です。ただでさえ一人の友達に割く時間が減り、関係性が希薄になるなか、リアルな友達にすら直接会えない期間が長く続きました。

こればかりは今の若者も、昔の若者と同じなのでしょう。本当に欲しいのは、自分のことをよく理解してくれて、なんでも話せるような、深い絆です。

「自分が今どこで何しているか」を共有するということは、そもそも親密な相手としかできないことですし、関係性をさらに深めることにもつながります。

「位置情報の共有」が若者の間で大流行しているのは、深い人間関係を築きたいという若者のニーズであり、アプリがちょうどいい受け皿になったと言えるでしょう。

共有するのは「位置情報」だけにとどまらない

「インサイト」という言葉があります。この言葉はマーケティングにおいて、一つひとつの流行現象を生み出す背景にある人々の根源的なニーズや意識を表します。1個1個のトレンドは何の脈略もなく発生しているように見えても、実際にはひとつのインサイトが複数のトレンドを生み出している可能性があるのです。

Zenlyを流行させたインサイトは、「深い人間関係を築きたい」という若者の心理でした。Zenlyが今年2月にサービスを停止しても、このインサイトは健在です。親しい人との人間関係を維持し、深めるためのアプリが、どんどん登場しています。

今、大ブレイクしているのは「BeReal」(ビーリアル)です。最大の特徴は、インスタのような写真の加工ができないこと。投稿できるのは1日1回で、アプリの通知が来てから2分以内に、その場で撮った写真を投稿するのがルールになっています。

その瞬間にスッピンだったとしても、盛ることはできません。さらに外側のカメラと内側のカメラの両方で同時に撮影されるので、今どこで、何しているかが相手にバレバレです。通知が送られる時間はランダムなので、食事中かもしれないし、入浴中かもしれない。僕は、シャワーを浴びている時に通知が来て、バスタオル姿のあられもない写真を投稿したことがあります。

昭和世代には「相互監視」に見えてしまうが…

投稿するといっても、不特定多数に公開するわけではありません。写真が共有されるのは、つながっている数人の親しい友人だけに限られます。2分以内に投稿できない場合は、次に自分が投稿するまで、友人の写真を見ることができないペナルティーもあるのです。

「相互監視じゃないか」と感じる人もいるでしょう。しかし、若者たちは、純粋に楽しいゲームとしてこのアプリを活用しているのが実態です。

僕の周りの学生たちは、通知が来ると「ヤバい、ヤバい、どうしよう」と大盛り上がりです。授業中やバイト中もやっているようで、正直、教壇に立つ身としては、イラっとすることもあります。