スマホの充電残量まで他人に公開していた
2023年2月、女子中高生を中心に人気を集めた位置情報共有アプリ「Zenly」(ゼンリー)がサービス終了になりました。Zenlyはフランス発のSNSで、2019年ごろから日本の若者の間に一気に広がりました。
自分の現在地を公開し、つながっている相手が今いる場所も地図上で確認できます。自宅や学校、職場も共有できますし、滞在時間や、移動中の場合は移動速度、スマホの充電残量までわかります。
サービス終了の発表に若者はとても失望していました。サービス終了が発表された時点で、日本の実業家インフルエンサーが買収を検討したり、世界中で複数の類似アプリが乱立したりしました。それほど若者はZenlyを利用していたのです。
なぜ今の若者たちは位置情報を共有したがるのか、昭和世代にはとても理解できません。「位置情報の共有なんて、24時間監視されているみたいじゃないか」「奥さんに浮気防止目的で見張られているんじゃあるまいし」と抵抗を感じる人は多いでしょう。僕もその一人です。
ところが、ネット上からZenlyが消えても、若者たちの「位置情報を共有したい」という気持ちはそう簡単になくなりません。むしろ共有する対象は位置情報にとどまらず、さまざまな分野に広がっている実態が見えてきます。企業側もこうしたZ世代の心理を突いたアプリを次々とリリースしています。どれも「次のZenly」の座を狙っているのです。
本稿では、「Z世代が位置情報を共有したがる理由」を読み解いていきます。
アプリは高校生の5人に1人が使っていた
サイバーエージェントによる2022年9月の調査によると、16歳から24歳までの若者におけるZenlyの使用率は、11.1%。若者の10人に1人は使っていたことを考えると、決して小さい数字ではありません。
さらに、対象を高校生に絞ると、使用率は約20%に倍増します。SNSの利用率は概して女子のほうが高くなる傾向があるなか、Zenlyは男女で同程度に利用されていたことも、見逃せません。高校生の5人に1人が自分の位置情報を喜々として晒していたことが分かります。
驚いたのは、Zenlyを使っていない若者たちも、位置情報を共有すること自体に抵抗はなかったということです。僕が実際にインタビューしたZ世代の若者たちも、「別に位置情報を共有してもいいんじゃないですか」「必要がないから自分は使ってないけど、Zenlyを使う気持ちはわかりますね」というスタンスが大多数でした。一部の若者だけに人気なのかと思いきや、ZenlyはZ世代に広く支持されていました。