「無人の車が走っている」という奇妙な110番
中学生になると、起こす問題も次第に大きくなりました。バイクの無免許が車の無免許になり、身体が小さいこの子が運転していると外から見えないので、「無人の車が走っている」という奇妙な110番が多数入るのです。
とにかく車が好きな子で、中学2年生の時には、車の売り買いまでしていました。もちろん盗んだ車です。
しかも高級車が大好きで、キーなしでもクラウンなどの高級車を手早く盗んでいました。その技たるや、警察官も目を見張るほどでした。
ある時、親しい警察官から、ハヤトが今警察署にいるよという連絡が入りました。
家出ばかりしていてなかなか会えないので、すぐに警察署に飛んで行くと、警察署では持ち物の確認作業中でした。
「これは先輩から2万で買ったグロリアの鍵」
ポケットの中からは、ジャラジャラと色んなものが出てきました。
どこかで盗んだのか、同じ飴が何本も出てきて、それに加え驚いたのは、何本もキーが出てきたのです。
このキーは何のキー? と尋ねると、「これは先輩から2万で買ったグロリアの鍵」とか、「それは友達から借りているクラウンの鍵」とか、次々と車の名前が出てきます。
その車は今どこにあるの?と訊くと、「もういらなくなったから、土手に捨てた」と、まるで自転車か何かの話をしているかのように話します。
これが、彼の日常でした。
家出中も、情報をもとに探しに行くと、見ず知らずの男性宅の車の中で何人もの友人らと入り浸って生活していました。