なぜ非行に走る少年少女が後を絶たないのか。元福岡県警少年育成指導官の堀井智帆さんは「私が関わったある少年は、母親が覚せい剤使用で何度も警察に連行されていて、警察を嫌っていた。非行の裏側には家族の問題が隠れている場合が多い」という――。

※本稿は、堀井智帆『非行少年たちの神様』(青灯社)の一部を再編集したものです。

原付に3人乗りで現れた小学生

サポートセンターで支援の仕事を開始して、一人で担当した初めてのケースで、私は衝撃的なシーンを目の当たりにしました。

小学校5年生の非行の相談だったのですが、その子に会いに学校に行き、先生が「あ、来ました」と言うので外を見ると、原付バイクにサンケツ、つまり3人乗りで、ブーンと坂を駆け上がって小学校に登校してきたのです。

原付に3人乗りで小学校に登校してきた(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/imamember
原付に3人乗りで小学校に登校してきた(※写真はイメージです)

もちろん無免許ですし、ノーヘルメットです。自転車どころではなくバイクに3人乗りで小学生が登校してくる姿を見て、目を疑いました。

その衝撃的光景を見た時、何となく言葉には表しにくいのですが、あ、私、これからこういう仕事をしていくんだな……と漠然と感じ、覚悟が決まりました。異文化を受け入れた瞬間とでもいいましょうか。

中学生を引き連れて歩く小学生

私が会いに行ったのは、その3人の中でも中心的なハヤトです。

中学生を引き連れて歩くような小学生でした。

養護の先生が、将来が心配だからと繋いでくれた子で、その先生が、「今日堀井さんという人が来るから、ちょっと会ってみて」と言ってその子を保健室に案内してきてくれました。

「福岡県警の少年サポートセンターの堀井です」と挨拶したら、聞き終わるその前に、その子は保健室からさっさと出て行って、慌てて追いかけると男子トイレに入っていってしまいました。

多分、私が女だから男子トイレだったら追いかけてこないと思ったのでしょう。