世論調査で明らかになった「NHK離れ」の実態

NHK放送文化研究所が2021年秋に行った世論調査の結果に驚いたNHK関係者は多かったに違いない(*3)

「娯楽として利用するものやサービス」で、NHKは、若者はもちろん高齢世帯でも1位を取れなかったからである。

30代以下では、30%にも達しなかった。

YouTubeや民放テレビに大きく水をあけられただけではない。読書離れが喧伝されて久しいにもかかわらず、16歳から29歳では44%、30代では47%が選んだ「本・雑誌・マンガ」にすら、まったく及ばない。

頼みの綱に見える高齢者ではどうか。

70歳以上でこそ77%と、民放テレビ(83%)に近いものの、60代では66%で民放テレビ(84%)に大差をつけられている。

娯楽について、特にテレビでは民放のほうが注力している、そんな言い訳がNHK関係者からは聞こえる気がする。

ニュースならNHK、地震をはじめとする災害時にはまずNHK、といった習慣は、まだ共有されている、という強がりが聞こえてくる。

しかし、それももはや高齢者だけの話である。

テレビを見ている人
写真=iStock.com/Tero Vesalainen
※写真はイメージです

ニュースですらNHKは求められていない

同じ調査では、「ニュースを見聞きするために利用するものやサービス」についても複数回答で聞いている。

NHKがトップだったのは70歳以上の84%だけで、60代と50代は、それぞれ84%と66%で民放テレビの88%、80%の後塵を拝している。

40代では民放テレビ(78%)だけではなく、Yahoo!(64%)にも抜かれて3位(60%)に落ち、20代ではさらにLINE(50%)にも追い越され4位(47%)である。

16歳から29歳にいたっては、民放テレビやYahoo!、LINEばかりか、YouTube(40%)やTwitter(調査当時の名称、39%)よりも低い38%にまで落ちる。

NHKが最も支持を集めた70歳以上ですら、民放テレビが81%と、わずか3%の差しかない。

信頼度では民放テレビを上回っているとはいえ、ニュースを仕入れるための情報源としてのNHKは、もはやほぼすべての世代で1番ではない。

娯楽でもニュースでもNHKは求められていないとすれば、どこに存在意義があるのだろう。