1on1は日頃からの情報共有があってこそ力を発揮する

③現在位置不明・経路不明な情報共有スタイルと組織文化

唐突に1on1を設定して(されて)、その場でとにかく課題を解決しようとする(あるいは相手に仕事の主体を引き渡そうとする)。その背景にあるのは、やはり日頃の情報共有および組織そのもののカルチャーの問題です。

①その組織で何がおこなわれているのか、だれが何をやっているのかわからない
②だれが何を話しているのかわからない
③だれに話を持っていったらいいのかわからない

でもって、場当たり的に1on1で相手に相談しまくる。自分の課題や役割も、相手の課題や現状もよくわからないままに。

④唐突に話を振る/振られる

こうして唐突に1on1を設定され、雑に話を振られても、相手はポカンとします。毎回、そのテーマの現在位置(組織における扱われ方、優先度、どこまで話が進んでいるか、だれが関係しているかなどの現状や進捗)の確認や、1on1を仕掛けるほう/仕掛けられたほうの現状の景色合わせから手探りでスタート。時間がかかって仕方がない。

その背景には

⑤普段から情報共有がされていない。相手に興味がない

この状況もまちがいなく存在します。

沢渡あまね『コミュニケーションの問題地図』(技術評論社)
沢渡あまね『コミュニケーションの問題地図』(技術評論社)
④マネージャーの想像力と能力の欠如

1on1で聞いたプライベートな話や、雑談ベースでの話をもとに、本人の同意なしに勝手に動いて、勝手に騒ぐ……それでは、単なる人騒がせマネージャーです。

厄介なのが、この手のマネージャーは正義感と自分の「べき論」や「仕事した感」でもって脊髄反射で動いてしまうこと。それが、現場やまわりや本人にどう影響を与えるか、その後のマネージャーとメンバーおよびチームの信頼関係にどう影響を及ぼすか、まるで想像できていない。経験不足も、マネジメント能力不足も否めません。

メンバーの意向を尊重し、約束を守る。メンバーの期待を裏切らない――マネジメントの鉄則です。それができないマネージャーは「テクニカルファウル! 退場!」。

1on1はあくまで組織の課題解決のための1つの選択肢

こうして、その組織のマネージャーもメンバーも1on1に対する効力感を失い、1on1を信頼しなくなります。酷くなると、1on1を「面倒ごとを押しつけられる前儀式」としてとらえ、1対1のコミュニケーションを避けるように。

・1on1に応じたら負け
・お互い本音を言わない、相談しない

このような文化が醸成されます。

また、すべての業務上のコミュニケーションが1on1に閉じてしまうのも問題です。秘匿の関係上、当人たちだけに閉じておきたいテーマや話の内容、プライベートな相談はさておき、1on1で話し合われた内容であっても組織全体にかかわるものは全体に共有しないとまずい。さりとて、そのためのコミュニケーションコストやデリバリーコスト(内容を他者に伝達する手間や労力)も悩ましい。よって、1on1だけでなんでも解決しようとするのはやはり考えものなのです。1on1は、あくまで組織の課題解決のための1つの選択肢です。

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