部下と上司が1対1で対話する「1on1ミーティング」を取り入れる組織が増えている。400以上の企業や官公庁に組織変革支援を行ってきた沢渡あまねさんは「1on1は万能薬ではない。コミュニケーションの取り方を間違えるとただの『無駄な時間』になってしまう」という――。

※本稿は、沢渡あまね『コミュニケーションの問題地図』(技術評論社)の一部を再編集したものです。

上司と1対1で接するビジネスパーソン
写真=iStock.com/maroke
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なぜ1on1ミーティングがうまく機能しないのか

1on1(ワンオンワン)ミーティング(以降、1on1と表現します)。人材育成や業務の進捗しんちょくフォローアップ、およびコミュニケーション活性などを目的として、おもにマネージャーとメンバーの間でおこなわれる対話。日本でも、最近1on1を取り入れる組織が増えてきました。小学生時代にバスケットボールをやっていた私は、職場ではじめてマネージャーから「1on1しよう」と言われたとき、対決を仕掛けられたのかと思い、身構えてしまいました(苦笑)。

もはやブームと言ってもいいくらい、職場での勢いを増してきた1on1。効果はあるものの、過信しすぎは禁物です。1on1は万能薬でも、魔法の杖でもありません。実際、「1on1が苦痛」などのメンバーやマネージャーの声を反映し、1on1をやめる企業も出始めました。1on1は制度ではなく、コミュニケーションのイチ手段。「やめる」「やめない」で論じるものではないと私は思いますが、その話はいったん置いておきましょう。

うまく機能しない1on1……そこからも、組織のさまざまなコミュニケーションの問題が垣間見えます。

「形骸化した1on1」でありがちな光景

①何も起こらない、時間の無駄

何も話すことがない。人事部から「毎週1回30分、マネージャーとメンバーで1on1をしろ」と強制されてやってはいるものの、マネージャーの「何かない?」からはじまり、メンバーの「そうっすね。特にないです」で、そのまま沈黙モードに。気まずく思ったどちらか一方が、ひたすら自分の話をしてタイムアップ。まるで消化試合。何かが解決するわけでもなし、忙しいのに正直勘弁してほしい。

②目先主義

1on1は単なる進捗確認の場。目先のタスクの進捗を確認してハイオシマイ。もちろん、それも有意義ではあるけれども、それってグループチャットで確認すればよくないですか?

あるいは、その場でなんでも解決しようとする。1on1で唐突にテーマや仕事を振られて、その場で答えを出せ、決断しろと迫られる(マネージャーがメンバーに迫るパターン、メンバーがマネージャーに迫るパターン、いずれもあります)。30分1本勝負、60分1本勝負な空気感。その場での、すぐの変化や成果を求められる。無理にその場で答えを出そう/出させようとする。これまた、重苦しくて息苦しい。毎試合、汗だくで終了。