生産が落ち込んだままのドイツの化学工業

ドイツのリーディングインダストリーといえば自動車工業を思い浮かべる人も多いはずだが、化学工業もまたそれに勝るとも劣らない重要な産業である。

ドイツのオラフ・ショルツ首相
写真=EPA/時事通信フォト
ベルリンの首相官邸で行われた会談後のドイツのオラフ・ショルツ首相

例えば、ドイツ西部のノルトライン=ヴェストファーレン州は、古くから化学工業が栄えており、州都デュッセルドルフには多くの日系メーカーが拠点を構えていることで知られる。

そのドイツの化学工業が不振に喘いで久しい。コロナショック前の2019年を100とする指数で測ると、化学工業(含む医薬品)の生産水準は、目下80程度での推移にとどまっている(図表1)。化学工業の生産量の減少は、コロナショック直後よりも2022年に入ってからのほうが深刻であり、なお現在進行中である。

【図表1】ドイツの製造業生産

比較のために自動車工業の動きを確認すると、その生産量はコロナショックを受けた直後に半減し、また半導体不足の影響などからいくつかの波を経験したものの、足元の生産水準はコロナショック前の9割を超える程度まで回復している。自動車工業と比べても、ドイツの化学工業の不振がことさら深刻であることが分かる。

それではなぜ、ドイツの化学工業の生産は落ち込んだのか。ドイツ化学工業連盟(VCI)は2022年12月15日に発表した報道資料の中で、エネルギー価格と原材料価格の急騰がその主因であるという見解を示した。エネルギー価格の中でも、特に化学工業にとって打撃となったのが、天然ガスの価格が高騰したことだった。