終活中の女性が樹木葬を望むワケ

植物に囲まれた墓「樹木葬」の需要が、急拡大している。10年ほど前までは樹木葬を手がける宗教法人や霊園は、数えられるほどだったが、現在では全国で1000カ所をゆうに超える。その人気ぶりは、一般的な墓や納骨堂以上だ。樹木葬には、終活を進めていく中での「理想」が、凝縮されている。樹木葬の多くが期限付きの永代供養で規模と費用が抑えられる。さらに死後の自然回帰を想起させるようなイメージとデザインが、とりわけ女性に受けているとみられる。

「私は10年以上前から樹木葬を手がけてきていますが、肌感覚でいえば、いま新規でお墓を求められる方の3~4割が樹木葬を選んでいらっしゃるのではないでしょうか」

樹木葬の開発や、コンサルティングを手がける株式会社366(本社:東京都港区)の代表、伊藤照男氏はいう。伊藤氏は、樹木葬のパイオニアとして知られる株式会社アンカレッジ(2009年創業、本社:東京都港区)の設立メンバーで、独立後の2020(令和2)年に同社を立ち上げた。わが国において、樹木葬の動向を最もよく知る人物のひとりである。

東京都港区虎ノ門の光円寺に設けられた「森の樹木葬」
撮影=鵜飼秀徳
東京都港区虎ノ門の光円寺に設けられた「森の樹木葬」

366は今年5月、新たに東京都港区虎ノ門の光円寺に、「森の樹木葬」をオープンさせた。神谷町の駅にも近い都会のど真ん中だが、そこは緑に包まれた静寂の空間が広がる。

シンボルツリーの紅葉や季節の花が咲く区画に、自然石の墓石を配したモダンな設計だ。秋の紅葉シーズンには、色づいた紅葉が楽しめる。この樹木葬の良さは、四季折々で表情が変わること。故人にたいする想いと、参拝者の癒やしが、墓参りを通じて調和する。

場所が変われば、樹木葬のコンセプトも変わる。台東区谷中の長明寺で366が展開する別の樹木葬は、樹齢600年の大樹の下に設けた個別納骨型。見上げれば覆い被さるような緑と、そこからの木漏れ日が差し込み、鳥のさえずりが聞こえる中でお墓参りができると、利用者に評判だ。

366が手がける台東区谷中の長明寺樹木葬
撮影=鵜飼秀徳
366が手がける台東区谷中の長明寺樹木葬

例えば前述の光円寺の樹木葬は、永代供養料7万円~(納骨料、粉骨料など別途必要)となっている。同社では本年中に、京都市伏見区、名古屋市の2カ所で、樹木葬を新規オープンさせる予定だという。