「人気俳優に服を着せればそのブランドが売れる」時代は終わった

トレンドを人為的に変化させることは不可能ではありませんが、2010年代後半以降は非常に困難になっています。それまでに使っていたキャンペーン的な手法ではマス層があまり動かなくなってきたからです。これも個人の嗜好しこうが分散化してしまったためではないかと考えられます。その最たる例は、有名芸能人を起用したキャンペーンです。

2005年ごろまでは特定の人気芸能人がドラマで着た衣装はもれなく大ヒットするという法則が成り立っていました。メンズでいうなら90年代半ばから2005年までの木村拓哉さんがその典型でしょう。ドラマ出演時に着用した衣装はどのブランドも売れに売れました。女性では、96年にバーバリーブルーレーベルを大ヒットに導き、「アムラー」という言葉も作られた安室奈美恵さんなんかがその典型でしょう。

最近でも「ドラマで着用してくれたら売れる芸能人」という枠組みは存在しますが、当時ほどの威力はありません。恐らく消費者の嗜好が分散化している上に、ドラマの衣装なんてしょせんは借り物に過ぎないと多くの消費者が知ってしまっているためリアルに受け取っていないのではないかと思います。

あらゆる価格帯のブランドで増えている「アニメコラボ」

それに比してある程度の売上高が期待でき、かつ全ジャンル・全価格帯のブランドで共通して行われているのが、アニメ・漫画・特撮とのコラボ企画です。この傾向は2010年代に入ってから顕著に増えたと感じています。直近では、衣料品ではありませんが、ファッションスニーカーで有名なショップ「アトモス」が「DCシューズ」というブランドと組んで漫画『キン肉マン』とのコラボスニーカーを発売するという発表が6月6日にありました。

「アトモス」が「DCシューズ」と「キン肉マン」とのスニーカーを制作 オリジナルソフビを同封

スニーカーショップの「アトモス(ATMOS)」は、「DCシューズ(DC SHOES)」に別注して漫画「キン肉マン」の要素を落とし込んだ3型のスニーカー“DCシューズ マンテカ 4 アトモス(DC SHOES MANTECA 4 ATMOS)”を6月29日に発売する。価格は全て2万7500円で、「アトモス」の公式オンラインストアと一部直営店で取り扱う。

アトモスというショップはファッションスニーカー好きからは非常にあがめられている人気ショップで「DCシューズ」も決してそこら辺にある無名のブランドではありません。こういう人気店・人気ブランドが『キン肉マン』という漫画とコラボ商品を作って販売するというのが最近の風潮を顕著に表していると感じます。