サブカルがメインカルチャーになった

こうしたラグジュアリーブランドや百貨店の動きについては「ユニクロ、しまむらなどの低価格商品とは異なる意味合いがあるのではないか?」と指摘する人もおられますが、個人的には同じ動機だと考えています。

まず、日本のアニメ・漫画類が『鬼滅の刃』や『スーパーマリオ』の映画の世界規模でのヒットを筆頭に世界中を席巻していることが挙げられます。世界的にも日本のアニメ・漫画類はビッグヒットコンテンツとなっています。そのコンテンツにファッションが便乗しているという状況にあります。

また国内に目を向けると、冒頭で述べたような「国民的アイコン」という人気者が見当たらなくなって分散化してしまったことのほかに、元来「サブカル(サブカルチャーの略)」と呼ばれていたアニメ漫画類が老若男女を問わない「メインカルチャー」となってしまい、逆に細かいディテールや先端トレンドに血道を上げるファッションが大衆からはオタク的に捉えられ「サブカル化」してしまったことが大きいのではないかと思います。

ファッションの話よりもアニメの話のほうが全世代的

筆者が2023年3月まで6年半にわたって非常勤講師を務めていたファッション専門学校では、50代の筆者と、10代後半から20代前半の生徒との間にジェネレーションギャップがあったことは言うまでもありませんが、最も大きくジェネレーションギャップを感じたのが実は「ファッション」に関する話題だったのです。こちらが知っているなじみのあるブランドやアパレル企業の名前を今の生徒たちはほとんど知りません。

逆に生徒たちが好んでいるブランドについてはこちらがほとんどわかりません。その結果、ファッション専門学校なのにファッションで共通の話題を探すことが難しかったのです。ところが、アニメや漫画の話題ならジェネレーションギャップはほとんどなく意思疎通ができました。もちろん、めちゃくちゃマイナーな作品を持ち出せば共通の話題にはなり得ませんが、例えばメジャーな作品――『ドラゴンボール』や『ワンピース』、『ルパン三世』などは中高年でも若者でも共通の知識として話が通じるのです。

いつの時代もどの分野にもジェネレーションギャップは当然あるものですが、ファッション専門学校ですらファッションについてはジェネレーションギャップが大きいのに比べ、メジャーなアニメ・漫画作品にはジェネレーションギャップがないのです。いかにアニメ・漫画が全世代共通の「メインカルチャー化」しているかということが分かるのではないかと思います。