「ファッショントレンド」が生まれにくくなっている
衣料品が売れるためにはいくつかの要因が必要になりますが、その中の一つに「ファッショントレンド」というものがあります。ファッショントレンドが大きく動くことによって、買い替え・買い足し需要が発生しますし、衣料品の着こなし方も変化します。
ですから衣料品業界にとってファッショントレンドの変化というのは大きな商機になります。もちろんファッショントレンドが大きく広がれば広がるほど衣料品の売れ行きは好調になり、トレンドの広がりが小さいと売れ行きはさほど広がりません。そのため、業界はビッグトレンドが定期的に生まれてほしいと願っており、それを実現するためにさまざまな仕掛けを凝らしています。
しかし、ファッションのビッグトレンドというのは2015年以降極めて生まれにくくなっています。恐らく最後のビッグトレンドは2008年から2015年までのスキニーパンツブームだったでしょう。この間、カジュアルパンツはスキニータイプ一辺倒でしたし、スキニー以外のパンツを使った着こなしも提案されていませんでした。
トレンドが分散すると売れ行きも分散する
2015年からスキニーとは正反対のビッグサイズトレンドが復活したと言われており、ビッグサイズのトップスやズボンが久しぶりに日の目を見ることとなりましたが、スキニーパンツも絶滅したわけではなく、シーズンごとにユニクロやジーユーなどのマスブランドで売られているので、ビッグサイズ一辺倒というわけではありません。
言うなら、ビッグサイズもスキニーも共存する状態ということになります。共存共栄というのは政治経済的には平和で好ましい状態ですが、商業的にはトレンドが分散すると売れ行きも分散することになるのであまり好ましい状態ではありません。
そして2015年以降のビッグサイズ復活に加えてスキニー残存という状況は2023年になったいまも変わりません。極端な言い方をすると、2017、2018年あたりと2023年の今とではファッショントレンドはほとんど変わっていないので、その当時に買った服は破損していない限り現在着用していても全く違和感がありません。
トレンドは分散傾向にあり、その上変化しにくくなってしまったため、衣料品業界的にはこれまで以上に服を売る工夫が求められています。