区民目線を無視するような職員が天下りや出世
千代田区では公民連携の再開発を「まちづくり部」が担う。都心で再開発の対象には事欠かず、事業者もビジネスチャンスをうかがっている。
区のエリアマネジメント推進方針では、住宅地で「建築協定等を活用した良好な街並み景観の形成・維持」(①)のほかに、業務・商業地で「市街地開発と連動した街並みづくりや地域美化活動、イベントの開催」(②)を掲げる。
このうち住宅地(①)の事例には、前出・二番町の日テレ本社跡地が当てはまる。再開発等特別区の制度を用いて高さ制限を大幅に緩和したビルを建て、市民も使える広場などを確保する。だが、これが区がうたう「街並み景観の形成・維持」になるのかをめぐり、住民の反対運動が起きている。
一方、業務・商業地(②)には、日比谷公園の再開発が該当する。三井不動産などが開発してきた東京ミッドタウン日比谷と、イベント広場としても活用できる隣接の日比谷公園を一体化させて人を集める構想になっている。しかし、この計画では公園の商業利用を進め、樹木を伐採することになっており、同じように住民の反対運動が起きている。
住民目線で区政を見てきた大城聡弁護士は「(どの案件も)まちづくりなのに住民が不在です。しかも役所内においても、開発を推進し、企業を優遇してきた人が評価されている」と話す。
たとえば、樋口区長が抜擢した坂田融朗副区長は、まちづくり担当部長などを歴任している。
小枝すみ子区議は2月の区議会で、元まちづくり部長が退職後すぐ、区が進める外神田一丁目再開発のコンサルタントとして、準備組合設立の仕事を受託したと指摘。そのうえで、「区民目線を無視するような職員や幹部のほうが天下りや出世など、ひときわ厚遇される傾向がある」と話した。
樋口区長は取材要請に応じていない。区には皇居や国会議事堂、官庁、主要企業本社などが集中し、海外の要人が来日する玄関にもなる。
そのまちづくりに、住民の意見が反映されにくいどころか無視される状態で、自治体関係者や開発業者のやりたい放題となると、自治体のみならず、日本という国のあり方が問われることとなる。