「時間をかけず、すぐやっちゃえ」

千代田区の身勝手ともいえる行政は他にもある。

今年4月11日早朝、奇妙な事件があった。神田警察通りの道路整備で、区側が警備員など引き連れ作業に入ろうとした。イチョウ並木伐採に反対の住民グループの妨害行為で区職員や警備員がけがをし、神田警察署に被害届を出し受理されたと、区が一方的に発表した。

しかし、住民側の証言はまったく異なる。住民側の関係者によると、住民側にもけが人が2人いるのに、区側の発表では触れていない。また、住民が体当たりしたとの区側主張の事実はないとし、逆に住民が工事フェンスで押されて倒れるなど、打撲や擦過傷を負った人がいるという。

この道路整備は現在、第2期。歩道拡幅のためイチョウを伐採し、桜に植え替える計画だ。第1期は石川雅己・前区長時代で、住民の伐採反対などもあり、イチョウを残した。区担当者は、第1期区間の特殊性で、需要が低い駐車帯の設置を見送ることで並木を残せたと説明する。

神田警察通りの第2期の工事区間
撮影=浅井秀樹
神田警察通りの第2期の工事区間

事情通は「石川さんは文句が出ると立ち止まった」と話すとともに、いまの区政は「知恵がない。時間をかけず、すぐやっちゃえとなっている」と指摘する。そして、かつて神田駅を重層化して東北新幹線を通したときのことを、この第2期の道路整備と正反対な事例として挙げる。

東北新幹線は1982年に大宮―盛岡で開業し、85年に上野―大宮も開通した。上野から東京駅までつなげようとしたが、神田地区などの住民が猛反発。新幹線通過時の騒音対策や、高架下や沿線住民・店舗への立ち退き対策が不明確などと、神田地区の地上通過に反対した。

事情通によると、東京で「ドン」と呼ばれた政治家が「東北新幹線は通しません」と説得し、補償もしたことで、住民が立ち退きに応じた。最終的に神田駅や周辺の改修が実現した。一方で、この政治家は「長い目で見ろ」とも親しい人に話していたという。

つまり、何年も後に反対派がほとんどいなくなり、改修工事でスペースも確保されていたのを見計らうかのように、神田駅に東北新幹線を通したと解説する。