首都機能が集中する千代田区で「公民連携」の大型の再開発事業案件が進行中だが、一部では「住民不在」の形で進んでいると批判の声が上がっている。取材したジャーナリストの浅井秀樹さんは「区は、賃料が年間で億を超える土地を所有する企業から無償提供されている。さらに再開発に関わる職員が天下りや出世など、厚遇される傾向もある」という――。

銀行が賃料37億円の土地を区に無償提供した理由

千代田区の都心再開発への突進ぶりは目に余るものがある。

樋口高顕たかあき区長は今年2月の議会招集で、歩きやすく居心地の良いまちづくり推進や、「公民連携」の都市再生整備計画を策定すると強調した。

そうした中、区内で新たな公民連携となりそうな大型案件がある。九段下交差点から区役所までの九段南一丁目で、北、中、南の3街区。このうち中街区は3786平方メートルで、三井住友銀行が所有する。

「広報千代田」6月20日号より
写真=「広報千代田」6月20日号より

区は中街区を今年3月末まで5年間、銀行から借り、「九段下まちかど広場」と「くだんしたこどもひろば」として整備した。しかし、子どもはほとんどおらず、いつ見ても閑散とした状態。唯一、後ろ側のバスケットコートだけは「それなりに利用されていた」(区関係者)という。

区議会では、区がこの広場ひろばの整備に2億円あまりをかけていた、とその必要性をめぐる議論が起きた。その中では区側の試算で年間賃料約7億4000万円する土地は何と銀行の無償提供だったという不可解な事実も判明した。

総賃料約37億円の土地を、なぜ銀行は区に無償提供したのか。

この中街区は斜めに通る区道で2つに分断される。ひとまとめの開発が好都合で、区と交渉する際に「貢献」があったほうがぐっと開発の話を進めやすい……そう考えるのが自然だろう。

建物の制限高の緩和期待もあるのでは、とみる住民もいるが、無償提供について筆者が三井住友銀行の広報担当者に聞くと、「区の広場づくりに協力した」とコメントした。