いまの日本はセックスを避ける社会

一般社団法人日本家族計画協会家族計画研究センターが2020年に実施したインターネット調査によれば、「この1年間、まったくセックス(性交渉)がないのは男性41.1%、女性49.5%」であり、婚姻関係にあるカップルでは、51.9%がセックスレスである。

日本性教育協会が2017年におこなった「青少年の性行動全国調査」では、2005年にピーク(大学生男子63.0%、大学生女子62.2%)をむかえた性交経験率は、それぞれ47.0%と36.7%まで急降下している 。

大人も子どもも遠ざかるばかりのセックスにたいして、日本で抱かれるイメージは、汚らしく、めんどくさいものでしかない。

まもなく最終回を迎える連続ドラマ「あなたがしてくれなくても」(フジテレビ系、毎週木曜22時〜)では、永山瑛太氏の演じるカフェの店長と、田中みな実氏のふんするファッション誌の副編集長の2人がともに、セックスにたいする後ろ向きな姿勢をあらわにする。

瀬戸内寂聴氏のような「男女の性愛を余すところなく描」く作家は、出てこないし、いまの日本では、支持を集めないだろう。

ベッドサイドのランプ、テーブルに聖書
写真=iStock.com/BenAkiba
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一部の性に奔放な人たちと、それ以外の人たち

不倫バッシングの理由をめぐっては、これまでも何度も語られてきたし、今回の広末氏の件についても、女優だから、と、彼女をかばう見方もある。

「もともと、日本は婚外の関係に寛容だった」とか、「日本では明治のはじめに、わずかな時期とはいえ「妾」が法律で認められていた(戸籍法)」、とか、「いまでも一夫多妻制を持つ国がある」といったかたちで、歴史や海外に照らしても、いろんな意見をくりだせる。

先に述べたように、わたしたちは、不倫の是非をネタとして食べつづけてきたし、今回は、そこに「交換日記公開の是非」や、サレ夫(不倫された夫)の涙、という新しい要素が加わり、熱が冷めない。

話題が熱さを失わないのは、広末氏や鳥羽氏のように性に自由な人たちが、ごく限られているからである。

セックスが日々の生活から消えているなかで、一部の奔放な人びとの振る舞いは、ネタとして楽しむには最適だからである。

「それ以外」、つまり、性と関係の薄いわたしたちは、自分たちの生活を脅かさず、安心して「倫理的な」=反・不倫的な意見をいくらでも堂々と並べられる。

ああでもなく、こうでもなく……。わたしのこの文章のように「不倫バッシングの理由」を探ろうとする会話もふくめて、ネタは尽きない。