“業界再編”を加速させるインパクトがある
5月30日、トヨタ自動車、ダイムラートラック、三菱ふそうトラック・バス、日野自動車の4社は、商用車事業の強化に向けた協業を発表した。主な取り組みとして、三菱ふそうと日野は、対等な立場で統合する。また、トヨタとダイムラーは、“CASE”など先端技術の実用化を急ぐ。今回の提携で目指すものは、主に商用車分野での“規模の拡大”だ。
現在、世界の自動車産業は、EVへの展開など“100年に1度”と呼ばれる変革期を迎えている。自動車以外の異業種からの参入や、業界内での競争の激化は避けて通れない。競争に対応しつつ電動化技術などを引き上げるために、経営体力の拡充は必要不可欠だ。
トヨタとダイムラーの協業を一つのきっかけに、今後、世界的に自動車業界の再編は加速することが予想される。エンジン車と電動車、乗用車と商用車などビジネスを分離する企業は世界的に増加するかもしれない。電動化や自動運転技術などの開発加速、実用化を狙い、国境をまたいだ連携なども増加すると予想される。
連携を選んだトヨタとダイムラーの思惑
トヨタとダイムラーが協業する、最大の目的は規模の拡大による事業の拡充だろう。両社は、脱炭素、デジタル化などに対応するために、電動化など先端技術の開発を加速しなければならない。その実用化のスピードを引き上げることによって、両社はトラックなど商用車ビジネスの成長加速を狙っている。
そのために、互いに競争するよりも、連携、協働したほうが事業運営の効率性は高まるだろう。協業によって、リスクテイクや設備投資の規模拡大も進めやすくなる。そうした考えは、トヨタ、ダイムラー両社の最高経営責任者(CEO)の発言から確認できる。
まず、トヨタの佐藤恒治CEOは、ネット接続、自動運転、シェアリング、電動化(CASE)は、広く世界に普及することによって、社会に付加価値を提供するとの考えを示した。そのために、トヨタは技術開発力を強化しなければならない。
ただ、わが国の商用車市場は海外に比べると小さい。佐藤氏も「CASE時代を生き抜くには日本の商用車事業は世界と比べて規模が小さく、各社が単独で戦うことは難しい状況だ」と発言した。現在、世界トップの自動車メーカーの地位にあるトヨタといえど、自力で商用車分野の国際競争に対応することは容易ではない。