急速にシェアを伸ばす中国企業に対抗

4月28日、GSユアサ、本田技研工業、および両社の合弁企業であるブルーエナジーはプレスリリースを発表した。GSユアサとホンダは、今後のEV(電気自動車)戦略に必要なリチウムイオンバッテリー工場を国内に建設し、研究開発体制も強化する。事業規模は約4341億円に及ぶ。最大で1587億円を経済産業省が補助する。

ホンダの三部敏宏社長
写真=時事通信フォト
電気自動車(EV)の事業戦略を発表するホンダの三部敏宏社長=2023年4月26日午前、東京都港区

電気自動車(EV)に搭載されるバッテリーの分野では、ここへきて中国企業の台頭が鮮明だ。中国では人件費が増加し、世界の工場としての地位も徐々に低下している。わが国をはじめ主要先進国企業にとって、中国企業のバッテリー部門での台頭は大きなリスク要因になることも考えられる。

そうしたリスクに対応するためにも、ホンダとGSユアサは国内の生産体制を共同で強化する。突き詰めて考えると、脱炭素に対応してバッテリーやEVなどの供給体制を強化するには、原材料の採掘、調達体制の強化も急務だ。

他の企業の参画も巻き込んで、両社の事業運営体制はさらに強化され、海外に展開していくことも考えられる。ホンダとGSユアサの連携強化は、多くの本邦企業に前向きな心理を与え、成長志向が高まる一つのきっかけになる可能性がある。

パナソニックは世界トップ3から陥落

今回のホンダとGSユアサの連携強化の背景には、いくつかの要因がある。まず、世界全体で経済安全保障上の重要品目としてバッテリー(特に、車載用などの高容量バッテリー)の重要性は急上昇している。

世界の車載バッテリー市場では、もともとわが国のパナソニックが高いシェアを獲得した。その後、大気汚染問題や異常気象の問題が深刻化し世界全体で“脱炭素”への取り組みが強化されるにつれ、急速に中国企業が台頭した。象徴的な存在は寧徳時代新能源科技(CATL)だ。

2017年にCATLは、パナソニックを上回るシェアを獲得し世界トップの車載バッテリーメーカーに成長した。その後、韓国のLGエナジーソリューションや中国のBYDも車載用バッテリー市場での成長を目指して設備投資を積み増した。2022年、パナソニックは世界第4位に後退した。