経営陣の決意はかなり強い

GSユアサは今回の合弁事業をきっかけに、ビジネスモデルの転換を加速させようとしている。同社は、エンジン始動時などに使う鉛蓄電池メーカーとして成長してきた。ただ、そうした事業運営体制を維持することは徐々に難しくなるだろう。中長期の目線で考えると、人口減少などによって国内の需要は縮小していく。

海外ではEVシフト、脱炭素の加速などを背景に高容量バッテリーの需要は増える。GSユアサにとって、高容量のバッテリーメーカーとしての業態転換は急務と化している。業態転換に必要なヒト、モノ、カネの負担を軽減しつつ、世界経済の環境変化にしっかりと対応するために同社はホンダを協業のパートナーとして選んだ。

環境変化への対応を進めるという点で、ホンダ経営陣の決意はかなり強い。加えて、ホンダは自主性を発揮するために海外企業との連携を強化した。そうした考えを取り込んでGSユアサは構造改革を加速させようとしているように見える。

リチウムイオン電池
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原材料の採掘エリアに拠点を置く企業も

ホンダとGSユアサは、業務、資本面で連携をさらに強化し、国際市場での成長を目指すだろう。要因の一つとして、環境規制の強化は大きい。4月25日、欧州連合は環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税を課す“炭素の国境調整”(国境炭素税などとも呼ばれる)を最終承認した。10月から、鉄鋼やセメントなどを対象に二酸化炭素(CO2)排出量の報告が義務付けられる。

中長期的に、車載用バッテリーなどの原材料の採取、製品の生産、廃棄・リサイクルまでのライフサイクル全体を通して排出されるCO2の報告(ライフサイクル・アセスメント)が義務化される可能性もある。

そうした展開に対応するために、原材料の採掘レベルから事業体制を構築する企業は増えている。例として、2024年からインドネシアで、韓国の現代自動車とLGエナジーソリューションはバッテリー生産を開始する予定だ。

今年3月、フォルクスワーゲンはカナダにEV用のバッテリー工場を建設すると発表した。リチウムなどのレアメタルの鉱脈を押さえる。そこに、二酸化炭素の回収、貯留、再利用などの技術を組み合わせる。このようにして中長期的に世界全体で直接投資は増えるだろう。