中国依存のままでは情勢変化に対応できない

問題は、台湾問題や半導体などの先端分野で米中の対立が先鋭化したことだ。米国は経済安全保障体制の強化のために半導体や人工知能など先端分野で対中規制や制裁を強化している。万が一、台湾海峡などで有事が発生すれば、中国に依存してきた資材調達は行き詰まるだろう。そうしたリスクに対応するために、ホンダとGSユアサはリスクを負担しあって国内でのバッテリー工場を建設する。

それは、わが国産業界にプラスの波及効果をもたらすだろう。わが国にはバッテリーの正極と負極の接触を防ぎ、リチウムイオンの透過を可能にするバッテリー部材(セパレータ)など素材分野に強みを持つ企業が多い。

それに加えて、本邦自動車メーカーの生産するEVに関しては韓国メーカーで問題になった発火問題は起きていない。そうした製造技術を用いて安心、安全な車載バッテリーや家庭、産業用の定置用バッテリーシステムを生産することは、世界の需要を取り込むことにつながるだろう。そうした観点から、経済産業省は両社のプロジェクトへの支援を決定した。

2040年までの“ガソリン車全廃”へ本腰

今回の発表には両社の狙いもある。まず、2040年にホンダは、世界販売のすべてをEVとFCV(燃料電池車)にする計画だ。かなり野心的な目標といえる。ホンダは欧州の自動車生産から撤退し、国内でも工場の閉鎖を進めた。得られた資金は、米中、および国内での電動車の生産体制強化に再配分されている。

米国ではGM、LGエナジーソリューションとの連携が強化されている。中国ではCATLからバッテリーを調達する方針が示された。残るピースは、日本国内でのバッテリー調達体制強化だ。2020年にトヨタはパナソニックと車載用バッテリーメーカー(プライムプラネットエナジー&ソリューションズ)を設立した。

日産はバッテリー事業を中国企業のエンビジョンに売却した。日産はルノーからの譲歩を取り付け、対等な資本関係を実現して電動車事業の成長を加速させようとしている。世界の自動車メーカーの合従連衡や異業種との提携が加速する中、ホンダにとってGSユアサは、国内での車載用バッテリー生産とEVなどの販売(地産地消)、さらには輸出体制の強化に欠かせない。