不正認証問題に揺れる日野を正す狙いも
また、ダイムラーのマーティン・ダウムCEOは「スケールこそが鍵」と明言した。バッテリー、燃料電池や水素エンジン。先端のパワーユニットの開発を強化し、経済合理性を持たせる。そのために必要な資金などを複数の企業で負担し、リスクを分散する。オープン・イノベーションを目指す体制も強化される。
その実現に向け、ダウムCEOは、三菱ふそうと日野の「統合は決定打」になりうると述べた。今後、トヨタとダイムラーは、対等な出資割合で持ち株会社を設立する。その上で、トヨタ連結子会社の日野、ダイムラーが株式の89.29%を保有する三菱ふそうは統合される。統合後、日野はトヨタの連結子会社から外れる。
なお、佐藤CEOは、不正認証が発覚した日野をトヨタが支えることに限界はある、との認識も示した。一連の不正認証は、トヨタの想定を上回ったことが示唆された。商用車事業の効率性向上と同時に、日野の経営風土を抜本的に正す。そのために、トヨタは日野を連結子会社から外すことを決定したと考えられる。
強みの“すり合わせ技術”では勝てなくなっている
トヨタとダイムラーの協業の背景には、世界の自動車業界を取り巻く急激な環境変化がある。足許、世界の自動車産業は“100年に1度”と呼ばれる変革期を迎えている。特に、異常気象の深刻化などを食い止めるために、脱炭素への対応は自動車産業にとって喫緊の課題だ。
脱炭素に対応するために、EVシフトは世界全体で加速している。それに伴い、自動車の生産はデジタル家電のような“ユニット組み立て方式”に移行しはじめている。日独の自動車産業が磨いた内燃機関などの、“すり合わせ技術”の比較優位性は低下するだろう。
また、乗用車とトラックなどの商用車で、必要とされる電動化などの技術も異なる。トラックの車体重量は乗用車より重い。トラックの電動化には、より大容量、かつ安全性の高いバッテリーや燃料電池が必要とされるだろう。
一方、乗用車には、ユーザーの嗜好、価値観などが影響する。ミニバン、SUVなど車種も多様だ。低中価格帯のモデルで満足するユーザーもいれば、高価格帯の車両により大きな満足感を見いだす人も多い。個々のブランド競争力を高めるために、電動化、車内エンターテインメント、自動運転などの技術向上に加え、走行性能などの引き上げや差別化も欠かせない。