日本高等学校野球連盟からNGが出たワケ

大谷は早速、NBのギアを使用した今年3月のWBC(ワールドベースボール・クラシック)でMVPに輝く大活躍を披露し、侍ジャパンを優勝に導いた。これで日本国内での販路拡大に大きな効果が出るかと思いきや……実はちょっとつまずいている。ある“邪魔者”の存在があった。

今年2月に発売された野球用スパイク「L3000v6」と「PL3000v6」の高校野球対応モデルは、ベロ(甲部分を覆うパーツ)の「3000」というロゴが規定から外れていると、日本高等学校野球連盟からNGが出たのだ。

高野連が定めているスパイクの規定は、「表面カラーはブラックまたはホワイト一色とする」などとかなり細かい。NBの新モデルが抵触したのは、「商標はベロ部に1箇所のみ入れることが可能であるが、その大きさは(縦)3センチ×(横)5センチ以内とする」という規定になる。

当該商品を確認すると、確かにベロ部分に入っている文字が規定より大きく見える。しかし、ベロとロゴは同じカラーリングで、よほど拡大しないとどんな文字が入っているのか認識できないレベルだ。

大谷効果もあり、特に規定のない草野球ではNBのレッドやネイビーのスパイクは大人気だという。では、国内に約13万人(2022年度の硬式野球部員数は13万1259人)いる高校球児の反応はどうなのか。甲子園常連校のあるコーチはこう話している。

「まだNBのギアを使っている選手は少ないですね。グラブやバットは一般販売していないんです。スパイクも種類が少なく、公式戦で使用できるモデルも限られていますからね」

スパイクの新モデルが使用不可になったこともあり、高校球児のなかでNBブームはまだ起きていないようだ。

大谷は今季、バットはチャンドラー社製を使用しているが、グラブはNBのものだ。NBはグラブやバットを国内でまだ販売していないが、この大谷モデルは今夏に数量限定でリリース予定だという。

前出のコーチは今後の高校野球界でのNB人気到来を予想している。

「NBのシューズに使用されているFRESH FOAMという素材はすごく柔らかくて、従来のスパイクにはないものです。公式戦で使用できるラインナップが増えると、多くの高校球児が履き替えるんじゃないでしょうか。とにかく大谷選手が使用しているというインパクトはすごく大きいんです。以前、大谷選手が使用していたヌバック素材の(アシックスの)グラブは高額(約7万円)でしたけど、高校生の間でもめちゃくちゃ人気でしたから。NBから大谷モデルのグラブが発売されれば、同じようなリアクションが起きると思いますね」

ただ、選手たち気になるのは、NBがどこまで野球ギアに本気なのか、ということだろう。

というのも、同じ米国ブランドのナイキは佐々木朗希(ロッテ)らをサポートしているとはいえ、ナイキジャパンは2013年に野球ギア(グラブ、スパイク、バットなど)から撤退。売り上げの高いフットウエア、アパレルに注力する戦略を取っている。NBの野球ギアが日本国内で成功するかどうかは、NB本社や同ジャパンの本気度にかかっている。要は、“大谷人気”にかかっているといえそうだ。