AIは世界をどのように変えるのだろうか。早稲田大学招聘研究員の渡瀬裕哉さんは「多くの文章データは知識人によって作られているため、AIは多くの知識人と同じくリベラルな価値観をもちやすい。このため論理的な文章を必ずしもアウトプットしているわけではない大衆の感情は、往々にして軽視されることが想定される」という――。

※本稿は、渡瀬裕哉『社会的嘘の終わりと新しい自由』(すばる舎)の一部を再編集したものです。

AI禁止のマークが書かれた紙を掲げる手
写真=iStock.com/Wachiwit
社会は「AIによる独裁体制」に向かっている(※写真はイメージです)

社会は「AIによる独裁体制」に向かっている

デジタル社会の進展の先を見据えて、すべての政策立案・政策執行をAIに任せるべきだという過激な意見も存在している。

曰く、「AIの処理速度は人間を遥かに超えており、人間が判断するよりも合理的な判断を下すことができる可能性がある」という。

筆者はこのようなAIによる独裁体制を「権威主義4.0」(王政・親権政治の権威主義1.0、中国・ロシア型の権威主義2.0、行き過ぎたポリコレの権威主義3.0に続く)と名付けたいと思う。

いまだ社会はこの段階には完全には到達していないものの、着実に権威主義4.0に向かっているように見える。

ChatGPTはロースクールの試験問題を解く

AI独裁体制には何らの欠陥もなく、人間自身よりも優れているのだろうか。

優れたAIに法案を作成させた場合、どのような法案が創り出されてくるのだろうか。

最近米国であった興味深い社会実験を紹介しよう。

現在、ChatGPTという対話型AIシステムが非常に注目されている。

このシステムは機械学習とビッグデータを駆使し、利用者からの質問に対して、文章で適切な返答を行うことができる。

このChatGPTはアメリカの各州のロースクールの難関試験問題を解き、ビジネススクールなどにも同様に合格している。

AIはそのような、ある程度型にはまった知識に関する議論には滅法強いという特徴がある。