「変えていいのかなという迷いが生じたとき、実は私、自腹で各社のビールを買ってきて、自宅で何度か徹底的に飲み比べをしたのです。そうしたらやっぱりプレミアムモルツが一番まとまっていたし、どんな料理にも合ったんです」
では、ビールの味だけが決め手だったのだろうか。他社の営業マンも諦めずに日参しているそうだが……。
「僕ら、メーカーさんのことを末永く共存していく家族だと思っています。だから一番大切なのは、関係性なんです。永田さんは僕らの喜びを自分の喜びのように捉えてくれる人。シェアを取るためなら何でも持ってきますというやり方は一番安っぽいし、長続きしませんね」
サントリー酒類ビール事業部長の仙波匠が言う。
「3月にリバイタライズしたプレミアムモルツが絶好調で、5月の対前年比は121%という数字です。縮小傾向にあるビール市場を活性化させる本丸の打ち手は、まずは飲食店でプレモルを飲んでいただくことです。なにしろ飲食店は巨大な『試飲の場』ですからね」
ちなみに永田の決め技は、「期限を切る」こと。飲食店から便利屋扱いされないために、「○月までに切り替えてくれないならもう来ません」と期限を切る。
「大学時代からチアリーダーと付き合っていたんですが、3年前の春、今年中に答えを出せと期限を切られました(笑)」
永田が入籍したのは、10年の2月。
「ぐう」がオセロに応じたのは11年の6月。ファーストコンタクトから1年半の歳月が流れ去っていた。
(文中敬称略)
※すべて雑誌掲載当時
(的野弘路=撮影)