日本人に必要なのは数学の基礎的訓練

こうした観点から言うと、日本人の多くにとって必要なのは、数学の基礎的な訓練だと私は考えています。

いろいろなことを知って教養を広げるより、物事の重要性を識別できるスキルや道具のほうが重要です。そうした道具として最強のものは数学です。

それにもかかわらず、数学は理工系の仕事に就くためには必要だが、それ以外の分野では必要ないと多くの人が考えています。

よく「私は文系だから、数学は必要ない」という言い訳を聞きます。しかし、これは間違いです。文系の仕事であっても数学が必要です。ただ、必要とされる数学が、理系の数学とは違うだけのことです。

教室で手を挙げる生徒
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「文系数学」を鍛えよ

私は、「文系数学」というものがあると思います。そして、日本では、この教育が著しく欠けていると思います。

理工系(とくに物理学系統)で必要とされる数学は、微分積分学を中心とした数学(解析学)です。これに対して、文系の仕事で必要なのは、線形代数学と統計学です。

これらは、データサイエンスやファイナンス理論を学ぶには、どうしても必要なものです。この訓練が足りないことが、日本がデータサイエンスやファイナンス分野で遅れをとる大きな原因だと、私は考えています。