何を学ぶべきか
問題は、何を学べばよいかです。これが一番難しい問題です。
文字通り、スキルを高めることを考えなければなりません。単に、知識を広げ、物知りになるだけではだめです。
また、提供されているセミナーのメニューから受動的に選ぶのではなく、一人一人が、何が必要かを能動的に判断することが必要です。
仕事に就いた後の再教育では、学校での教育のように、標準的なカリキュラムはありません。誰もが同じ内容を学べばよいわけではないのです。
時とともに学ぶべき内容が変化するし、目的とすべき水準や現在の水準は、人によって異なります。だから、目標としてどれだけの水準を目指し、そこに辿り着くのにどれだけの勉強が必要かは、人によって違います。
スマートフォンなどのIT機器の使用に習熟することが必要な人たちもいるでしょう。ただ、こうしたレベルで十分であるわけでは決してありません。
多くの人が、さまざまな変化に対応できる基礎的な知識を身につけることが重要です。
物事を評価する考え方を獲得する必要がある
では、データサイエンスの最先端で何が行なわれているか、最先端のAIが何をやっているか、などについての知識が必要なのでしょうか? 企業のリスキリング教育では、そうした講座を行なっている場合が多いように見受けられます。
確かに、いま最先端で何が起こっているかを知るのは、よいことです。しかし、それを知ったところで、すぐに同じことをできるわけではありません。
では、ディープラーニングなど、コンピュータがデータから学習して能力を高める手法を学ぶ必要があるでしょうか? しかし、最初からそれを目指すのは難しいでしょう。このように、カリキュラムの選択は難しいことです。
いま何が起きているかの知識は、新聞や雑誌、あるいはウェブを見ていれば分かります。問題は、毎日大量に生じるニュースの重要度を判断して位置づけ、それをどのように自分の仕事に反映させていくかです。
そのためには、物事を評価する考え方を獲得する必要があります。つまり、重要なのは、「いま何が起きているか」を学ぶことよりも、それらを評価できる能力を身につけることです。