※本稿は、野口悠紀雄『超「超」勉強法』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
「基礎から積み上げよ」は正しいか?
「勉強は、基礎から徐々に積み上げよ。基礎が大事」といわれます。
基礎がしっかりしていないと、応用ができない。登山で、麓から一歩一歩登るように、基礎から順に進まなければならないというのです。基礎をしっかり理解してからでないと、先に進んではいけないということです。
しかし、基礎は難しいし、退屈です。「教科書の最初のページが完全に理解できてからでないと、つぎのページに進んではいけない」と考えると、なかなか進めません。
完全に理解することができないので、そこで立ち止まってしまう。これが一番良くないことです。真面目な学生ほどそうなります。
数学ではことに基礎が難しい
基礎が難しいのは、数学において、とくに顕著です。
例えば、数の概念。3かける4はなぜ12なのか? これを説明するのは、そう簡単ではないでしょう。
平行、直線などの概念もそうです。平行とはどこまで行っても交わらないことだというけれど、どこまでも行くことはできない。それを、どうやって確かめるのか?(実は、これは定義なので、そのまま受け入れるしかないのですが)
直線は2点を最短距離で結んでいる。では、最短距離とはいったい何か? どうやって確かめられるのか?
物理学でも基礎概念は難しい。「光は直進する。最短距離を走る」というのですが、光は、どうやってその経路を見出しているのでしょう? 誰に聞いても分からないので、誰もがいい加減に理解しているのだと思います。
多くの人は、これらについて、曖昧に理解しただけです。あるいは、単に覚えたのです。しかし、それでよいのです。