金利上昇で銀行の経営が悪化する理由
2023年3月、アメリカで相次いで銀行破綻が起きた。ITスタートアップ企業との取引を主とするシリコンバレー銀行(以下・SVB)、暗号資産関連企業との取引が多かったシルバーゲート銀行とシグネチャー銀行の3行である。SVBの倒産規模はアメリカ史上2番目、シグネチャー銀行は3番目だったという。
08年、大手投資銀行リーマン・ブラザーズが倒産したのは、サブプライムローンの破綻がきっかけだった。今回の破綻の背景には何があったのだろうか。
トランプ(共和党)前政権は、主に富裕層を対象とした大幅減税を行った。その消費刺激効果が功を奏したのか、私が19年末にニューヨークを訪れたとき、街全体が活気づいて躍っているように見えたものだ。富が富裕層から低所得層に徐々に滴り落ちる理論「トリクルダウン」は、通常、下層まで恩恵が及ぶことは少ない。しかし減税の規模が大きいと、景気刺激の効果が社会全体に行き渡るのだなと感じた。
そこで世界は新型コロナウイルスに襲われ、商業活動を行うと疫病に感染するという状況が起こった。そのまま放っておくと失業が生じて、どちらかというと中流以下の階級に負担が及んでしまう。バイデン(民主党)政権は財政支出と減税によって、これを防ごうとした。