経済学の常識一変も日本だけ旧態依然

米国大統領経済諮問委員会委員長や連邦準備制度理事会議長を務めたベン・バーナンキ氏が、ノーベル経済学賞を受賞し、2022年12月10日にスウェーデンのストックホルムで授賞式が行われた。米国そして世界の経済政策に重要な役割を果たしたバーナンキ氏の栄誉ある受賞を喜びたい。

2016年7月に、安倍晋三元首相を表敬訪問したベン・バーナンキ氏。
2016年7月に、安倍晋三元首相を表敬訪問したベン・バーナンキ氏。(時事通信フォト=写真)

バーナンキ氏と日本経済とは深い関係がある。1999年にプリンストン大学部長だったときに来日し、当時の日本銀行の緊縮的すぎる金融政策を批判して「日本がデフレを脱せないのは経済状況のせいではなく、日本銀行の政策が自縄自縛に陥ったからだ」と批判した。

日本のマスコミは彼の言葉である「self-induced paralysis」を「日本銀行が機能不全に陥っている」と訳したが、これでは彼の真意は十分に伝わらない。直訳は「自ら招いた麻痺」。彼も後の回顧録では言いすぎたかなと気にしているようだが。

2017年、日本銀行金融研究所主催の国際会議で、バーナンキ氏が「インフレ目標を追求し続けるべき」との講演を行ったとき、インフレ目標を追求するのは手段にすぎず、本来の目標は失業率の改善であると私は考えていた。