米国議員は「中国共産党の武器だ」と批判

最近、米国をはじめ主要先進国で、中国の字節跳動(バイトダンス)が開発したSNS、“TikTok(ティックトック)”への規制が強化されている。その理由は、自国の個人情報などのデータが中国の当局に流出する懸念だ。しかも、利用者が急増していることが危惧を倍加させることになった。

米国下院エネルギー・商業委員会の公聴会で発言するティックトック(TikTok)の周受資CEO=2023年3月23日
写真=CNP/時事通信フォト
米国下院エネルギー・商業委員会の公聴会で発言するティックトック(TikTok)の周受資CEO=2023年3月23日

3月23日に開かれた米下院エネルギー・商業委員会の公聴会で、キャシー・マクモリス・ロジャース委員長(共和党)は「ティックトックは中国共産党の武器だ」と強く批判した。欧州諸国の中にも、同じような動きが目立っている。

今後、SNSに限らず、IT先端分野での米中対立は一段と先鋭化するだろう。2017年、中国共産党政権は“国家情報法”を施行した。それ以降、米国をはじめ主要先進国は、自国のデータが中国に流出しないように警戒を強めた。2018年春先以降、米国は5G通信機器や半導体などのハードウエア分野で中国企業への制裁を強化し、それがスマホアプリ(ソフトウエア分野)にも及び始めた。

ティックトックは依然として急速にユーザーを獲得しているものの、自国データを守り経済安全保障体制を強化するため、米国をはじめ主要先進国による先端分野での対中規制などはさらに強化されるだろう。

約21億円の制裁金、株の売却の要求も

足許、米国をはじめ多くの主要先進国は、公的な機関で働く人の使う端末からティックトックのアプリを排除し始めた。2月、米国政府は連邦政府職員に対して、政府支給の端末からティックトックアプリを削除するよう命じた。同じ動きは、わが国や欧州委員会、英国、カナダ、オーストラリアなどにも広がった。

政府関係者の行動履歴などが中国に伝わり、自国に負の影響が及ぶのではないかとの警戒は高まっている。また、4月4日、英国政府は保護者の同意なく子どもの個人情報を使用したことなどを理由に、ティックトックに約21億円の制裁金を科した。さらにバイデン政権はバイトダンスに対して、ティックトックの株を売却するよう求め、応じない場合にはアプリを禁止すると圧力を強めているようだ。

それに加えて米国政府は、半導体やソフトウエア分野などを対象に、米国の投資ファンドが中国の未公開企業への投資資金を禁止することも検討している。実現は難しいとみられるものの、米国におけるティックトックの禁止を目指す議論も進んでいる。日米欧において、自国のデータが中国に流出し、世論や経済活動に負の影響が出るとの警戒は一段と高まっている。