お金持ちの財布のひももコロナ禍で固くなった

ところ変わって、日本を代表する観光地である京都。紅葉シーズン真っ盛りの二〇二一年秋のことだった。コロナの感染が第五波と第六波の間で落ち着いていたこともあって、有名な神社仏閣がライトアップされていることを受けて、筆者はテレビ番組の取材でここを訪ねることになった。

そうはいっても、本当に観光客が押し寄せているのかと一抹の不安もあったが、東京駅から新幹線で向かうとびっくり。乗客の六~七割が京都駅で降りたのだ。通常なら、東海道新幹線の乗客は名古屋と新大阪で降りることが多いのだが、この時はほとんどの乗客が京都で降りた。これには驚かされた。

すでに京都駅構内から人出でごった返していたが、市内の目抜き通りである四条どおりのホテルにチェックイン後、タクシーで清水寺に向かうことになった。行き先を告げると、タクシーの運転手は「お客さん、清水寺まではものすごく混んでいて、一時間ぐらいはかかりますよ」という。そこで、行けるところまで乗車し、途中からは歩いていくことにした。

どうにか清水寺の山門に到着したのだがそこからが大変で、なんと拝観料を払うまでに四〇分待ちだった。紅葉シーズンの京都にはコロナ禍前に何度か訪れているが、感染拡大が一段落したとはいえ、ここまで混んでいるとはさすがに予想外だった。

清水寺
写真=iStock.com/urbancow
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ところが、山門近くの土産屋で「こんなに観光客が来ているならホクホクでしょう?」と聞いてみると、店主は「いや、全然」と渋い顔をしているのだ。謙遜もあるのかなと思い、筆者が「そんなことないでしょう、こんなに人が来ているんだから」と食い下がっても、「見てごらん。ここに来ているお客さんは若い人ばかりでしょ。若い人は、なかなかお金を落としてくれないんですよ」としみじみ語ってくれた。

やはり、相対的にお金を持っている中高年層は感染リスクを警戒して、なかなか外出しようとしない。そのため、これだけたくさんの観光客が訪れている割には地元にお金が落ちていないようだった。

お金を持っている人たちの財布のひもは、コロナ禍で予想以上に固いことを実感させられた場面だった。