企業の姿勢は3つに分かれ始めた

最近、わが国企業の中で賃上げの機運が高まってきた。その背景には、約40年ぶりのインフレが続いて、賃上げをしないと従業員の生活が厳しくなっていることがある。それに加えて、人手不足が深刻化しており、賃金を上げないと企業が必要とする人材を確保することが難しくなっていることがある。

衆院予算委員会に向かう岸田文雄首相=2023年2月28日、国会内
写真=時事通信フォト
衆院予算委員会に向かう岸田文雄首相=2023年2月28日、国会内

企業の賃上げに対する姿勢を見ると、大きく分けて3つに分類することができるだろう。一つ目は、物価の上昇分程度の賃上げを行い既存の従業員の生活水準を維持しようとする企業だ。

二つ目は、生活維持からもう一歩進んで、雇用や賃金体系を根本から見直し、優秀な人材を積極的に確保しようとする企業である。正規雇用だけでなく、非正規雇用の分野でも積極的な賃上げは増えている。そうした企業が増えることは、中長期的なわが国産業の競争力と経済の実力向上を支えるだろう。そして3つ目のカテゴリーは、収益状況が厳しく、なかなか賃金を上げられない企業も多い。

相応の収益力を持ち、より高い成長を志向する企業は、今後も個々人の成果に応じて賃金をアップさせるだろう。一方、今後の景気動向によっては、賃上げが難しくなる企業も増えるかもしれない。懸念されるのは、経済格差の拡大である。格差の拡大を防ぐために政府はセーフティーネットの整備が必要になるだろう。

自動車産業は政府の要請に応じる動き

賃上げに対する企業の考え方は、いくつかのグループに分けるとわかりやすい。一つは、国内物価の上昇率前後の賃上げを行い、従業員の生活水準を守ろうとする企業だ。1月、消費者物価指数の上昇率は前年同月比4.3%だった。物価の上昇余地が懸念される中で連合や政府は実質ベースでの賃金増加を念頭に、5%程度の賃上げを目指している。

そうした要請に対応するために、要求水準、あるいは物価上昇ペースに見合った程度の賃上げを行う企業は増えている。主力の自動車産業では、ホンダやトヨタ自動車が労働組合の要求に満額回答した。企業によって賃上げ水準にばらつきはあるが、マツダでは約4%、日産自動車やダイハツでは3%台の賃上げが目指されている。

二つ目は、最近、わが国企業の中には、経営トップが賃金体系を根本から見直し、優秀な人材の確保と登用を推進しようとする動きだ。その根底には、長く続いてきた“終身雇用・年功序列”の雇用慣行から見直し、年齢や性別などにかかわらず、個々人の活力を高めようとする考えがある。