イオンは約40万人の賃上げ、オリエンタルランドも
代表的な企業の一つとして、サントリーホールディングスは6%超の賃上げを検討している。同社は積極的な賃上げによって物価上昇下での従業員の生活を守ることに加え、従業員のモチベーションを高め、より高い成長を目指そうとしている。サントリーは賃上げに加えて研修制度も拡充し、人々が学び、新しい発想を実現して高付加価値の商品を生み出す力を引き上げようとしている。人材を育成して、より高い成長を目指そうという考え方だろう。
積極的な賃上げの動きは非正規雇用にも及び始めた。一例として、イオンはパート従業員の賃金を7%引き上げる。連結子会社の147社、約40万人のパートを対象に賃上げが行われる。平均年収は8万円増える見通しだ。オリエンタルランドもパートなどの時給を大きく引き上げる。人材の確保に加え、賃上げによって人々の成長意識を高め、事業運営の効率性向上につなげようとする企業が増えつつあることは、他の企業にもより強い賃上げ志向を与えるだろう。
中小企業の賃上げは依然として厳しい
大企業と中小企業に分けて考えると、中小企業には賃金をなかなか上げることが難しいケースが多いようだ。それは、商工組合中央金庫(商工中金)の「中小企業の賃上げの動向について(2022年11月商工中金景況調査 トピックス調査分)」などから確認できる。
単純な比較はできないが、2014年、2016年に商工中金が行った調査に比べ、定例給与・時給を引き上げる企業の割合は増えている。ただ、2023年の中小企業全体の賃上げ(定例給与・時給の平均引き上げ率)は1.98%にとどまる模様だ。2021年の1.31%、2022年の1.95%に比べ賃上げ率は小幅に高まってはいるものの、実質ベースでの賃上げは容易ではない。
最大の問題は、わが国の中小企業を取り巻く事業環境が不安定化していることだ。全体として中小企業の倒産件数は増えている。また、大企業と比較すると足許の中小企業の事業環境の厳しさも増している。昨年12月の日銀短観によると、大企業製造業の最近の業況判断は7、非製造業は19だった。一方、中小企業はそれぞれ、-2と6だった。