97%の芸人は一生かかっても売れることはできない

悲しい現実ですが、大勢いる芸人の中で売れるのはたった3%にも満たないのです。97%は一生かかっても売れることはできない。この売れる3%にいかに入っていくか。好き勝手やっていたのでは入れない枠に入れる確率を高めるのが、マネージャーの役割です。

芸人が事務所に所属する意味もここにあります。

「好きなことだけやりたい」のであれば、事務所に入る必要なんてないのです。売れたい、成功したいと思っているのなら、自分から歩み寄らなければいけない。

例えば、コウメ太夫が良い例です。彼の強みは、なにより素直であること。良い意味で自分のセンスを信じておらず、「これやってみなよ」と言われたことをすぐに取り入れるのです。それが彼のブレイクに直結しました。自分を過信せず、俯瞰ふかんで見る。それだけで光明がさしてくると思います。

自分たちのやりたいお笑いを貫く、という芸人もいます。でも私は、「お前の人生、1000年あるのか?」と思ってしまいます。芸能界で活躍できるのは、長くても数十年。その短い時間内で結果を残したいなら、自分の足りない才能を理解して、人のアイデアも取り入れてほしい。それが売れる近道だからです。

バカにされたときに返せるかどうかで未来が決まる

芸人が芸能界で成功するために、「プライド」はいりません。賞レースで結果を出した芸人も、最初はひな壇からのスタートです。そこでいじられて、バカにされたときに「どう返すか」が、本当に売れることができるかどうかを左右します。

「自分がやりたいことだけやっていたい」というプライドが「いじられること」を拒否するのなら、芸人ではない職業でお笑いに関われば良いと思います。

マネージャーの役割で「気付かせること」のほかに重要だと思うのは、「次のステージに行ったときに成功する」という視点で、芸人たちの人間力を育てること。

以前、友人からこんな話を聞きました。

友人の知り合いで、とあるIT企業に勤めているエンジニアがいました。その人は若くして年収1000万円を超えていると言うのです。私は驚いて、「エンジニアってそんなに給料良いのか?」と聞きました。

ですが、友人は「いや、彼が出世できたのは、ただ『明るい』からなんですよ」と言うのです。そのエンジニアはコミュニケーション能力がずば抜けて高く、技術力というより「可愛がられて」、その結果出世できたというのです。