バイきんぐ、錦鯉、ハリウッドザコシショウなど、多くの人気芸人が所属する芸能事務所ソニー・ミュージックアーティスツ(SMA)。しかし、かつては「芸人の墓場」と呼ばれていたこともあった。なぜ変わったのか。チーフマネージャーの平井精一さんは「50席ほどの自社ライブハウスの存在が大きかった」という――。

※本稿は、平井精一『「芸人の墓場」と言われた事務所から「お笑い三冠王者」を生んだ弱者の戦略』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を再編集したものです。

舞台
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数の多さで他事務所に対抗しようと芸人を増やしていた

2007年、豊島区要町に「Beach V(びーちぶ)」というライブハウスが誕生しました。都心から少々離れた千川駅に近い、50席ほどの小さなライブハウスです。

このBeach V、当初は稽古場になる予定でした。

SMAお笑い部門のスタンスは「来るもの拒まず」。少数精鋭の他事務所に芸人の数の多さで対抗しようと、どんどん人を増やしていました。最初は事務所の会議室を借りてネタ見せをしていましたが、いろんな芸人がいるのでトラブルが起きます。借りた稽古場のペンを持ち帰ってしまうような、小さな問題がたくさん起きました。

そこで、コウメ太夫やヒライケンジなどヒット芸人が生まれたこともあり、「そろそろ稽古場を作ろうか」という話が出てきました。

でも、ふと思ったのです。当時のコウメ太夫らが出演していた『エンタの神様』が終わったら、そのままテレビ露出自体が無くなってしまうのではないかと。収入が止まった場合、仮にライブハウスの家賃が月50万円だとしたら、年間で600万円の赤字を垂れ流すことになります。