新ネタを作らない芸人は事務所に残れない
同じく「SAKURAI」もこう言います。
「ライブが行われていない昼間の時間帯も、芸人はBeach Vに集まります。単独ライブに向けた準備をしたり、ネタ合わせをしたりできるからです。誰かがいれば、ネタを見せ合ってダメ出しをし合います。
ライブがある時間帯にBeach Vにいると、出演者ではなくても『お前も出る?』と急遽出演させてもらえることもあります。流れでついでにライブに出られるのは、他事務所ではあまり無いことなのではないでしょうか」
「来るもの拒まず」のSMAお笑い部門ですが、だからと言って甘い事務所ではありません。去るもの追わずというスタンスなので、辞めていく芸人を引き留めることもしません。犯罪以外はなにをしてもクビにしませんし、なによりも情熱を重視します。ですが、いくら言っても新ネタを作らない芸人は残しません。
常に新ネタを作り続け、新しいことにチャレンジし、第三者の意見を受け入れて変わっていく。それをできる芸人だけが、売れると感じています。
「三冠」より売れる芸人を一人でも増やすほうが重要
錦鯉が2021年の『M-1グランプリ』で優勝して、SMAは「吉本以外で初めて三冠(『M-1グランプリ』『キングオブコント』『R-1グランプリ』)を獲った事務所」と称賛されることが増えました。
2012年の『キングオブコント』でバイきんぐが優勝。『R-1グランプリ(当時「R-1ぐらんぷり」)』では、2016年にハリウッドザコシショウ、2017年にアキラ100%が優勝しました。最近では、優勝こそ逃したものの、2022年の『キングオブコント』でや団が3位になりました。
「芸人の墓場とまで言われたSMAが、すごい成果を出した」と言われるのですが、これまで三冠獲得を意識したことはありません。
三冠を獲れたこと自体は、もちろん嬉しいです。しかし、私にとっては三冠を獲ることより「一人でも売れる芸人を出す」ことのほうが重要な課題です。
60歳で定年退職すると仮定すれば、私がSMAにいられるのはあと5年ほど。2004年末にSMAお笑い部門を立ち上げたので、約24年、SMAの芸人と歩むことになります。
「同じ釜の飯を食った仲間」とでも言うのでしょうか。泥水をすすりながらライブに出続ける姿を近くで見ているからこそ、そのうちの一人でも多くの芸人に売れてほしい。三冠という栄光は、目指して掴み取ったものではなく、あとから付いてきたものなのです。